8月6日 4時間目(14:30~)

永井 良三(自治医科大学 学長)

医学に必要な科学技術


医師でありながら、物理や数学が好きだったという永井先生。医学にはさまざまな要素が詰まっているため、中学や高校で学習する基礎的な知識はとても重要です。永井先生は、複雑で最先端の医療技術や体のメカニズムの根本が、基礎的な科学の仕組みで成り立っていることを伝えてくれました。

ヒトの細胞の中では、DNAからRNAが読まれてタンパク質が作られ、そのタンパク質は20種類のアミノ酸の配列により成り立っています。しかし、それがちょっと狂うだけで病気になってくる。一人ひとりの遺伝子の違いがどういう影響を及ぼしているのか、まだ完全に解明されていませんが、少しずつ明らかになってきています。分子レベルで物事を見られるようになり、こうした多くのことが分かってきたそうです。

ここから少し難しい話題。腎臓の遺伝子をちょっと手を加えて心臓に負担をかけると、その負担が脳に伝わり、脳が腎臓に心臓マクロファージを増加させるように命令を出し、心臓を保護しようとする…そうして、自らの不具合を治そうとする機能が私たちの身体には備わっています。
「そのくらい生命は複雑なんですよ」と永井先生。 「しかし、基本をひとつずつ勉強することで、こういった複雑な世界も分かるように、先に進めるようになるんです。」ともおっしゃっていました。

次に、心臓の音や超音波による動画などがスライドに映し出されました。それらは音の波、ドプラー現象、パルス波をうまく利用して、遠ざかっていく血液か、向かってくる血液かを判断しているそうです。 内視鏡に使われている青色ダイオードでは、血液が赤色をしていることから、補色の関係を利用し、血流の乱れを発見できるそうです。血流の乱れの原因は、癌である可能性が高いため、この青色ダイオードを用いた内視鏡は癌の発見にも役立っています。

レーザーメスは、その波長を用途に合わせて使い分けられ、メスとしてだけではなくピンセットのようにも使われているそうです。「最先端の医療技術にも、光の仕組みがうまく利用されていたり、吸光度が利用されていたり。全部中学や高校で習う基礎的な内容がもとになっています。」と、基礎の重要性を永井先生は話していました。

最後に「創造性の育成塾で皆さんは、たくさんの知識を詰め込んだことでしょう。しかし、人の見つけた理屈の筋道を追っても仕方がない。自分で仮説を立てて考えてほしい」と、永井先生から塾生に向けたメッセージをいただきました。事実の羅列ではなく、なぜか、どうしてか、どういう仕組みなのかを考えて表現すること。簡単にはできないことですが、塾生たちはきっと乗り越えていくでしょう。


(2期生 高山宗子)



経歴

昭和49年 東京大学医学部医学科卒業
昭和58年 米国バーモント大学留学
平成 5年 東京大学医学部第三内科助教授
平成 7年 群馬大学医学部第二内科教授
平成11年 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻循環器内科教授
平成15年 東京大学医学部附属病院長
平成21年 最先端研究開発支援プログラム「未解決のがんと心臓病を 撲滅する最適医療開発」中心研究者 東京大学トランスレーショナルリサーチ機構長 天皇陛下の主治医もされたあと、
平成24年 自治医科大学学長

     

■研究内容(業績) 心臓病の臨床医として仕事をしながら、心臓・血管や代謝システムの分子生物学を開拓。

 

■ 受賞歴

平成10年 ベルツ賞

平成12年 持田記念学術賞
平成14年 日本動脈硬化学会賞

平成18月 日本医師会医学賞

平成21年 紫綬褒章

平成24年  European Society of Cardiology (ESC) Gold Medal


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