一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。
東川 翔
東京大学 博士課程(物理オリンピック)
「物理オリンピックでの体験を振り返って」
4時限目に講義された上田先生の研究室に所属する東川先生。
東京大学大学院で、物理学の研究を行っています。
2008年と2009年の物理チャレンジに出場、2009年には国際物理オリンピックにも出場され、金メダルを獲得しています。さらに、大学1年生から大学院修士1年生まで代表候補選手の訓練に参加し、修士2年生の2015年には国際物理オリンピックの引率も行っています。科学オリンピックをめざす塾生たちにとっては、ロールモデルのような存在。そんな東川先生に、国際物理オリンピックの体験談について、講義していただきました。
まずは自己紹介。「研究内容は、トポロジー(数学)と物質科学(物理)。趣味は読書・ランニング・バスケ。講義の中でいくつかの本も紹介します。」と、先生。
そして、物理オリンピックについて。
まずは、「国際物理オリンピックに参加するには」から始まります。「第1チャレンジには、筆記試験と実験レポートがある。筆記試験は、“マニュアル力”を図るものだ。」と、4時限目の上田先生の講義で出てきたキーワードが登場します。その後、第2チャレンジと、その後の国内合宿についての紹介もしていただきました。
ここから、国際物理オリンピックの体験談。
「7日間の期間中、試験は2日間だけ。あとは各国の選手と交流したり、世界遺産を観光したりした。」「メキシコ大会の開会式は、オペラハウスで行われた。」などと、実体験を写真で示しながら説明していきます。また、2015年の引率役の経験から、試験問題の議論(すり合わせ)や翻訳など、引率者の役割についても説明していただきました。
続いて、国際物理オリンピックの参加を通して得たものを話していただきました。
「同世代の、優秀で、意識の高い人々と交流できる。国際物理オリンピック選手の先輩や後輩とも交流できる。」国際物理オリンピックの卒業生の進路は様々だとのこと。「物理の中でもいろいろな分野に進んでいるし、化学・医学・情報科学・数学に進んだ人もいる。」
ここで、一番のメッセージが伝えられます。それは、「チャレンジしましょう!」
「成功前は、『そんなの無理だよ!』と言っていた人が、成功後には、『きみならできると思っていたよ!』と言う。これは他人だけでなく、自分の心の中にもあることなのかもしれない。このように、自分の行動を都合よく解釈することに惑わされずに努力してほしい。」と、先生は話しました。
ここから講義内容は変わり、東川先生自身の大学院生(研究者)としての生活を例に、大学院生がどんな生活をしているのかを紹介していただきました。
「理論物理学では、やることはデスクワークと議論。フラスコを持つような実験はしない。」「テーマを決める→研究する→発表する」「思ったよりもマルチスキルである。先行研究を調べる必要がある。共同研究時にはコミュニケーション能力が必要。発表ではプレゼンテーション能力も必要。」など、普段はあまり接することがない大学院生(研究者)のリアルな生活や考えに触れることができました。
最後に、先生は、「素晴らしいもの」として、「ONE PIECE。ウォークマン。オリンピック。『レ・ミゼラブル』。『チェルノブイリの祈り』。」を紹介しました。(最後の2つは書籍。読んでほしいと塾生に言います)これら5つの共通点は、「製作者の強い思いが感じられるもの。これらのような、素晴らしいものをどんどん摂取してほしい。」と伝え、講義は終了しました。
質疑応答の時間では、「物理チャレンジの課題に要領よく取り組むコツは?」「講義中に紹介されたような、いい本の見つけ方は?」など、多くの塾生が質問をしました。
科学オリンピック出場経験者の講義、塾生には大きな刺激になったようです。
(5期生・矢吹凌一)