一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。
上田 尊
練馬区立開進第四中学校
「モース硬度計を活用した鉱物の分類」
「校庭の砂をじっくり見たことがある人はいますか?」という問いかけから始まった上田先生の実験。何人かの塾生が、「ガラスのように透明なものがあった。」「透明なもののほかに、白く濁ったものもあった。」と答えました。
続いて、先生は袋に入った校庭の砂を配り、分類するように指示します。
「鉱物は4000種類以上あります。分類の方法には、色・大きさ・形・光沢・うすい塩酸をかける、というように様々な方法があります。」と説明。塾生たちは、「色」や「形」で砂を分類します。
「では、分類したものに塩酸をかけてみましょう。」と、うすい塩酸を配布。塾生たちは、それぞれに塩酸を垂らしていきます。すると、黒色のものから泡が出てきました。
「泡の正体は二酸化炭素。塩酸を垂らして、二酸化炭素が出るのは、石灰石が含まれているということ。石灰石は白色ですが、岩石には様々な成分が含まれていて、生成時に圧力もかかっているため、石灰石を含んでいても白色とは限りません。」と、先生が解説。
「では、塩酸をかけても反応しない、同じ色の小さな石はどんな方法で分類できるでしょうか?」と、先生はさらに問いかけます。ある塾生が「硬さ」と答え、先生は、「硬さを調べるために、まず、ガラスをクリップの先でこすってみてください。」と指示します。
試してみると、ガラスに傷はつきません。「では逆をやってみよう。」という先生の指示の後、クリップをガラスでこすると…傷がつきます。ガラスの方がクリップよりも硬いことが確かめられました。
これをヒントに、「滑石・輝石・自分の爪・クリップ(鉄)を硬い順に並べてください。」と、先生から課題が出されました。
塾生たちは、これらをこすり合わせて硬さを比較し、班ごとに出した結論を発表します。さらに、滑石・黒雲母・角閃石・石英についても、同様の課題が出され、「黒雲母が最もやわらかい。」と答えた班に対して、「持ち方を変えると黒雲母で滑石が削れた。」という反論をする班も。それぞれの班が、真剣に課題に取り組んでいることがうかがえます。
「ここからが本題。」と、先生が塾生にさらなる課題を示します。
「花崗岩と安山岩に含まれている黒い鉱物は何か?」
これをどのように調べるか。先生は、ヒントとして「モース硬度」を説明しました。モース硬度とは、傷のつきやすさによって鉱物を鑑定するものです。先生は、モース硬度と鉱物の対応表をスクリーンに示します。
塾生たちは課題に取り組み、得られた結論を発表します。
「クリップやガラスで黒雲母を傷つけたときと同じように傷がついたので、安山岩にも花崗岩にも黒雲母が含まれている。」「10円玉で傷ついたので、安山岩には方解石が含まれている。」塾生たちは、根拠を述べ、論理的に結論を導きます。先生は、「硬さだけでは鉱物の種類を決めることはできません。光沢・手触りなど、他の情報も組み合わせて、決めることができます。」と説明し、鉱物の割合と火成岩の種類の対応を表す図を示しながら、同じ種類の岩石でも含まれる鉱物の割合には幅があることを説明します。
「この世界で一番硬いものは、ダイヤモンド。ダイヤモンドは何でできていますか?」と先生が問いかけます。すると、塾生が「炭素」と答えます。
「鉛筆も炭素でできているけど、硬くないですよ。」「それは結合がちがうから。」「その通りですね。同じ原子でできている物質でも、結合によって硬さが異なります。」
塾生と先生のやりとりが白熱しました。
その後、先生が手元にダイヤモンドを取り出し塾生の机をまわって、様々なものを削ります。「ダイヤモンドの原石は、同じダイヤモンドで削ることができますが、レーザー加工・イオンレーザー加工・真空中で加熱した鉄板にのせる、といった方法もある。ものすごい技術を結集させた方法です。」という説明があります。
最後に、「同じ種類の鉱物でも、硬さには幅があるので、硬さ以外の分類の方法も知り、活用していく必要がある。これは、地学以外の分類においても、必要な考え方です。」という、他分野における活用も視野に入れた説明があり、講義は終了しました。
(5期塾生・矢吹凌一)