レポート一覧

一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。



8月2日(水) 6時限目

有馬 朗人
塾長 (元 東京大学総長・元 文部大臣)

「閉塾式」


 合宿開始から1週間が経ち、とうとう最後の講義となりました。創造性の育成塾第12回夏合宿のしめくくりは、有馬塾長による講義です。

 「光は粒子だと思いますか?それとも電子だと思いますか?」有馬塾長から塾生への問いかけで、講義が始まります。「あなたたちはひとりの人間という“粒子”だが、実は波でもある。ただしあまりにも大きく重いので、波としての性質がほとんど現れない。」塾長の不思議な言葉に、塾生たちは興味津々です。


波動の基本的な性質の説明をした後、「光が波であるか、粒子であるか」をめぐる論争が時系列に沿って紹介されていきます。ニュートンに始まり、ホイヘンス、ヤング、プランク、アインシュタインといった各国の著名な科学者による様々な実験とその結果、そしてそこから導き出される結論が示されたあと、有馬塾長自身が行われた実験の動画を見せていただきました。


 同じような現象は、電子でも見られます。このことを実験によって視覚的に証明したのが、育成塾でも第1回(2006)・第4回(2009年)に講義してくださった故・外村彰先生です。1920年代に始まるこうした数々の成果によって、ニュートン力学から量子力学・波動力学への発展がなされ、現代物理において、ミクロの世界はすべて理解できるようになったとのこと。塾生たちは、100年間の努力の歴史に思いを馳せたことでしょう。


 現代の科学に関しては、興味深い問題がたくさんあります。有馬塾長は「ビックバン以前の宇宙の様子は?」「生命の起源は?」「地震・津波の予想技術を確立せよ」「地球温暖化を防げ」「エネルギー危機を救え」という5テーマを示されたうえで、「これ以外にも数多くの課題がこの世界には存在する。これから先、君たちの世代がこうした問題を解決していってくれるだろうと私は期待しているよ。」と塾生に呼びかけられました。

 そして最後に、塾生に様々なメッセージを送ってくださいました。
「常に好奇心を持ち続けよ」「自ら考え問題を解決せよ」「想像力を鍛えよ」「不思議や疑問を徹底的に追求せよ」「人のまねをするな、しかし協調性は持て」「批判にくじけず、何年でも自説を主張せよ」「大きな志を持て」…他にもたくさんの言葉をいただいて、一旦講義は終了です。

 修了式では、有馬塾長から塾生一人ひとりに修了証書が渡されます。塾長から証書をいただく塾生の横顔は、1週間前から大きく成長したものになっていました。


 海外から参加した8名の塾生には、創造性の育成塾からの修了証書のほかに、JSTからの証書も渡されました。母語ではない日本語で難しい講義を受け、質問をし、立派にまとめの発表もやりとげた彼らにとって、この1週間はほかの塾生とはまた違った意味をもつものになったことでしょう。有馬塾長とともに写真に写る8人の顔は、とても充実していました。

 全員に修了証書が渡されたあとで、先ほどの講義への質問の時間です。「電子が波の性質を示すということは、原子核の周りを電子が波のように回っているということか」「初日に伺ったスピンの話が分からなかったので自分で調べてみたが、よく理解できなかったのでもう一度説明してほしい」などと、塾生から出る非常にハイレベルな質問に対し、有馬塾長はチョークをとって黒板に数式を書きながら、予定時間を超えるほどに熱心にお答えくださいました。
塾生の質問と先生のお答えによって講義内容がますます深められ、質問しなかった塾生も一生懸命にノートをとっている様子が印象的でした。毎日講義を受ける中で「なぜ?」を見つけ、「知りたい!」という思いがより芽生えたのか、講義を重ねるごとに質問が鋭くなっていくのを感じていましたが、最後の講義の質問内容は、これまでで最もいいものだったと思います。



 私は現在、医学部医学科に在籍していますが、高校2年生の時に医師への道を歩もうと決めた最初の契機を考えてみると、今から5年前の育成塾において、製薬を通じて医学・薬学に興味を持ったことでした。今回参加した48人の塾生の中にも、ハイレベルな講義がたくさん詰まった濃い1週間を通して、私のように未来への種が蒔かれたのかもしれません。彼らが5年後にどのような道へ踏み出そうとしているのか、今から楽しみです。


(7期生 因間朱里)


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