第1回夏合宿(関本・有馬塾) ⑥(8月6日)

全国から理科が大好きな中学2年生40人を集めて、ノーベル賞授賞者など日本屈指の科学者の講演、気鋭の理科教師によるおもしろ実験を12日間にわたり行う合宿「創造性の育成―関本・有馬塾」。
6日目の8月6日は、午後からの授業は実験。夜は科学記者の話を聞いた。

 

自分で研究してみよう―実験

 4・5・6・7限目は、江戸川区立小松川第二中学校の髙橋和光先生による実験。
「きみも今日から科学者/研究者」のタイトルの通り、生徒自身がテーマを決め、考え、研究することに取り組んだ。
「現在は、専門的な情報にも調べればたどりつけるし、発表もできる。研究は、テーマを見つけ、基本的なやり方さえ身につければ、誰でも始められる。今何をしなければならないのかを自分に問い、考えなければならない。それが研究者として必要なことです。」
髙橋先生の注意の後、10グループに分かれての「自由研究」がスタートした。

 

<テーマを設定>
30分の時間で、テーマを設定。「携帯電話が熱を持つ、熱の発し方は、使う機能によって異なるのか」「お皿を洗う時は40度くらいのお湯で洗ったほうが落ちやすいけど、『洗剤の泡だち方はお湯の温度によって変わってくるのか』」。身近な「なぜ?」から生まれたテーマもいくつか見られた。

 

<どうやったらできるかな?>
決めたテーマをどうすすめるか?実験の方法、条件設定、どの機材を使うかも生徒自身が考える。実験器材は100種類以上準備された。器材の準備・使用法のアドバイスをした中村理科工業の担当者も「これほどの器材を準備する授業は初めて」と舌を巻く。
「空気圧と温度の関係」をテーマとしたグループが2つあった。
容器は、ペットボトルとビンをそれぞれ選択。
実験をするには、容器を密閉し、容器内の気圧を上げ下げするのだが、温度を計測するセンサーをビンの口に挟もうとするとどうしても密閉できない。
センサーはケーブル状のもので、計測機、パソコンとつながっているので、容器の中に入れてしまうこともできない。

 

 この隙間をどうやって埋めるか?一生懸命押さえることから始まり、隙間をボンドで埋める、粘土で挟む・・・。助手役をしていた教師も含め、七転八倒していた。

「できた!」の声が上がったのは、ビンの気圧を下げて、温度を下げる実験をしていたチーム。
パソコンに表示されたグラフでも気圧が下がるにしたがって温度が下がる様子がきれいに見てとれた。

 

 「こういうのはね、結果が少々おかしくなってもいいんですよ。子供達の中には『あの時こう考えてやったんだ』というのが記憶に残りますから。」
大騒ぎの教室の片隅で、高橋先生は目を細めていた。

 

科学は、どきどき、わくわく―講話

 夜の講話では、5月に第1回科学ジャーナリスト大賞を受賞、毎日新聞科学環境部で連載中の「理系白書」取材キャップ、元村有希子記者が話をした。

 

<科学取材はすごく面白い>
冒頭は、元村記者が科学を好きになった理由から始まった。
「高校の時は理系をとっていたけど、大学では教育学部、6年前に科学環境部に配属されました。正直びくびくしていたらすごく面白かった。やっている人が面白かった。みんな個性的で目がキラキラ。魅力的に感じました。」<科学の発展の中で心配なこと>
この日は広島に原子爆弾が投下した日だったこともあり、原子爆弾開発の元となる公式を発表したアインシュタインのエピソードを紹介した。
「アインシュタインはナチスのドイツより早く原子爆弾を作るよう、アメリカ大統領に手紙を書きました。だけど、ドイツは降伏しました。使う理由がなくなったのでアメリカ大統領に原爆を使わないよう、手紙も書きました。だけど原子爆弾は落とされた。」
「たぶん、科学者達は研究が面白くてやっていると思う。でも、それが使い方を間違えると、多くの人の命を奪うような結果にもなるということも考えることが重要です。」

 

<失敗を面白がる>
また、携帯電話の普及の立役者で、電気を通すプラスチックを開発した白川英樹氏が「失敗からヒントを得た」こと、「(たんぱく質を分析する技術を開発し、がんの早期診断などへの可能性を開いた)田中耕一氏をはじめノーベル賞学者や科学者は、失敗を恥ずかしがらず失敗を面白がる」ことを紹介した。最後に、元村記者は塾生に「将来何になりたい?」と質問。
「(声がなかったので)だったら何にでもなれる。そのためには好き嫌いなく勉強すること」と、塾生達にアドバイスを贈った。
※「スーパー先生と子どもたち」(2006年)の記事を事務局にて再編。再収録しました。
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