第1回夏合宿(関本・有馬塾) ⑦(8月7日)

光電効果と半導体を使った実験

 午前(1・2・3)限目は、東京大学客員教授の瀧川洋二先生の授業。
アインシュタインなど20世紀の科学者達の研究のおかげで発展した技術について、実験を交えながら勉強した。
まず瀧川先生は、アインシュタインが、物質に紫外線など強い光をあてると原子から電子が放出されるメカニズムを解明したことを紹介。塾生は、アルミホイルとストローで作った装置で実験し、確かめた。
次にアインシュタインの発見以後、科学技術が飛躍的に向上した理由として、「量子力学」の誕生、その後の「半導体」、なかでも集積回路の中でスイッチの役割をする「トランジスタ」の開発を挙げた。
実験では、トランジスタや発光ダイオードといった半導体の働きを勉強した。

 

 さらに、瀧川先生は、原子核が分裂する際に大きなエネルギーが生まれることを、実験を通じて説明。ホースに酸素と水素を注入。塾生全員に握らせた後に、ホースの口で火花を起こすと、ホース内の酸素と水素が水へと化学反応をおこし、大きな音を立てて爆発。生徒は悲鳴を上げながら握った手を離した。
最後に瀧川先生は、アインシュタインの登場によって科学は飛躍的に発展したが、一方で原子爆弾のようなものも生み出した。我々はこれをどうするのかということを考えなければならない。と締めくくった。
塾生は「水素と酸素だけでもあんなにすごいのに、(原子爆弾のエネルギーを想像すると)恐ろしくなった」と、科学の「怖さ」も垣間見た様子だった。

 

温度に関する実験―まとめと発表

午後(4・5・6・7限目)は、昨日に続きグループ別での自由研究のまとめと発表に挑んだ。
塾生たちは、前日からの実験をつづけ、必要なデータを集め終わったグループからまとめの作業に。
先生の指示で、以下の点をまとめた。
①テーマ設定の動機と仮設
②実験方法や使用器材
③実験結果
④計測したデータをどう分析したか
2日間にわたる工夫の全ての発表はパワーポイントを使ったプレゼンテーション。①実験結果のコメント文②実験風景の写真も取り入れ、③実験データのグラフ・表の作成など。
塾生にとっては初体験ばかり。しかし、それを苦もなく取り組む姿勢は、さすが、全国から選ばれた理科好き塾生たちだった。

 

 

 できばえを競う発表の時間は1グループあたり5分。

 

 先生と塾生も参加して審査が行われた。最優秀賞に輝いたのは、「圧縮の温度変化」と題し、圧力と温度の関係について研究したグループ。
①ティッシュが燃える温度を実際に計測②密閉したペットボトル内の空気圧上昇に伴う温度変化のデータを計測、得られたデータから、ちり紙が発火する空気圧を数式により求めた③圧縮発火器で発火する空気圧を計測、数式で求めたものが適正な数字であったことを証明した。
その他、「真空中に温度は存在するか」「水の温度による洗剤の泡の立ち方の違い」をテーマにしたグループが優秀賞になった。
「最初(うまくいかなくて)実験が失敗かと思っていた。そしたら、計算した数字があっていてすごく嬉しかった」「頭の良いチームメイトに負けまいと思ったら、アイデアがどんどん湧いてきた。そんな自分に驚いています。(その友達とも)仲良くなれてよかった」塾生達は興奮ながらに語った。
前日から全体の実験を指導した瀧川教授は「全国の中、高校で、この種の実験が行われたのは初めてではないか。学校では揃えられない高価なセンサーなど100種を超える教材が持ち込まれたことにもよるが、塾生の次々に繰り出す工夫、発想には舌を巻いた。しかも、大変難しいテーマに挑み、それぞれ成果を得ていたことは貴重です」と手放しだった。

 

植物と水の話―講話

今日の講話は、中西友子・東京大学大学院農学生命科学研究科教授。学生時代に放射線を研究していたことを活かし、放射線の一種である中性子線(中性子顕微鏡)を使って、植物の中の水の動きを捉える手法を開発した研究者だ。
中性子顕微鏡で捉えた、まるでレントゲンのような花の写真を紹介した上で、「かっこいいと思うかもしれないが新しいことをしようと思うと装置を自分で作らないといけない」と、自身の研究活動の実情を吐露した。また「いろんな分野を知っていると、どこかで何か役に立つ。例えば物理・化学・生物、いろんなものに興味をもって花開かせてもらいたいと思います。」と、成功へのカギを科学者の卵達にアドバイスした。

※「スーパー先生と子どもたち」(2006年)の記事を事務局にて再編。再収録しました。
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