8月2日 3時間目(13:00~)

上田 正仁 (東京大学大学院 教授)

事実は小説より奇なり
~量子の世界への誘い~


本日3限目の講義は、上田先生の「疑問を述べない限り、自然は何も語らない。物理学は“いかに答えるか”よりも“いかに問うか”が問われる」との言葉から始まりました。

「“物質の最小単位は何だろう”との問いが量子の世界を切り拓いてきた」と、テーマである量子のお話へ。 量子とは、光や電子など、世界を構成する最小の物質のことを言います。
「量子はぞっとするような、嘘のような性質を持つ」と、先生は講義中に何度も繰り返しました。
例えば、光について。2重スリットという装置を通した光をスクリーンに照射すると、光は粒子としての性質を示し、その到達点は一見ランダムに見えます。

しかし、光の軌跡を重ね合わせていくと、軌跡が増えるにつれてスクリーンに干渉縞が浮かび上がり、波としての性質が観察されます。片方のスリットを隠すとこのような現象は見られないことから、1つの粒子が2つのスリットを同時に通過していると結論付けられます。 同様の現象が電子や原子でも観察されるとのこと。
実験の映像を見た塾生からは驚きの声が上がりました。

先生は、自然現象が全て数学で表せることに対する驚きが物理学を志したきっかけだったと述べ、量子論における数式の一例を塾生に示しました。話が高度になってきたところで質問を受け付けると、塾生からの数々の質問が飛び交いました。

「現在物質の最小単位とされるクォークよりも小さな物質は発見されないか」との問いに対しては、欧州のLHCで行われている、高速に加速した粒子を衝突させて破壊し、その中身を観察する実験を紹介されました。
クォークより小さな物質はまだ見つかっていないものの、この実験により“Higgs粒子”という素粒子が発見されたとのこと。
従来何もないとされた真空中には、実はHiggs粒子がぎっしりと詰まっており、それが物質の質量を生み出すとの説明に対し、塾生は興味津々の様子でした。

講義後半では、量子論が科学の世界をどのように変え、どのように応用されつつあるのか紹介していただきました。現在は直観に反する理論が次々に生まれるパラダイムシフトの時代であり、今世紀は量子論のマクロな現象への拡大や情報理論との融合、生命現象の物理学による理解などが発展するだろうと述べ、最後に「The best is yet to come!(最良のときはこれから!)」と、未来の物理学を担う塾生を激励していただきました。

 

(4期生・高倉隼人)



経歴

1963年 大阪生まれ。
1988年 東京大学理学系研究科修士課程卒、東京大学・理学博士。
NTT基礎研究所研究員、広島大学工学部助教授、東京工業大学教授等を経て、 2008年(平成20年)より、現職の、東京大学大学院・物理学教授。

■著書■

「東大物理学者が教える「考える力」の 鍛え方」(ブックマン社)
「東大物理学者が教える「伝える力」の 鍛え方」(ブックマン社)

■受賞歴■

2002年 第六回松尾学術賞
2007年 文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)
2008年 仁科(にしな)記念賞 第5回(平成20年度)日本学術振興会賞
2011 Americal Physical Society Outstanding Referee Awards   (*日本訳: 米国物理学会卓越審査員賞)


Pick Up

これまでの夏合宿