8月2日 6時間目(16:30~)

山極 寿一 (京都大学 総長)

暴力はどこから来たか


山極先生による類人猿研究の講義は、「猿を知ることは人間を知ることである」との一言から始まりました。続いて、人間の体や文化はどのような経緯で進化してきたのだろうか、との問いを塾生に投げかけます。

第2次世界大戦後、「人間は狩猟を通じて本能的に戦争をするようになった」との説が主張されました。これに対して先生は、人間は狩る側ではなく狩られる側として進化してきており、700万年に及ぶ人類の歴史の中でヒトが武器を用いて戦うようになったのは僅か1万年前である、と反論します。

この説の背景には、ヒトと遺伝的に近いゴリラが凶暴で残忍な動物であるとのイメージが挙げられます。しかし実際は、ゴリラなどは、仲裁により争いを避けようとする傾向があり、互いに顔を見つめあってコミュニケーションを図ろうとするそうです。
スクリーンには、そっぽを向く人間の顔を必死に覗き込もうとするゴリラの映像が映し出され、塾生からは笑い声が漏れました。このような特徴は現在の人間にも見られ、戦争は人間の本能に基づくとの考えは誤りであると先生は言います。

 

一方で、ヒトは他の類人猿には見られない身体的・社会的特徴も数多く持ちます。これらの特徴が成立した背景や、その根拠についても説明していただきました。例として、ヒトは言葉が成立する遥か以前に他者に共感する能力を身につけ、それが「憧れを持つ」「目標に向かい努力する」「他者の姿に自分を重ねる」といった行為に繋がっていると述べられました。

最後に、ヒトの暴力は農耕社会が生まれて定住生活を始めたころに成立したと考えられる、との結論に至ったところで夕食の時間となりました。

山極先生には、夕食後の時間も、引き続きご講演いただきます。

(4期生・高倉隼人)



略歴

1952年生まれ。
学位:京都大学理学博士(1987年1月)
専門分野:人類学・霊長類学


1975年3月 京都大学理学部卒業
1977年3月 京都大学大学院理学研究科修士課程修了
1980年3月 京都大学大学院理学研究科博士後期課程研究指導認定
1980年5月 京都大学大学院理学研究科博士後期課程退学
1980年6月 日本学術振興会奨励研究員
1982年4月 京都大学研修員
1983年1月 財団法人日本モンキーセンターリサーチフェロー
1988年7月 京都大学霊長類研究所助手
1998年1月 京都大学大学院理学研究科助教授
2002年7月 京都大学大学院理学研究科教授
2009年4月 京都大学教育研究評議会評議員(2011年3月31日まで)
2011年4月 京都大学大学院理学研究科長・理学部長
(2013年3月31日まで)
2012年4月 京都大学経営協議会委員(2013年3月31日まで)
2014年10月 京都大学総長


日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長を歴任
日本アフリカ学会理事、中央環境審議会委員、日本学術会議会員 アフリカ各地でゴリラの行動や生態をもとに初期人類の生活を復元し、人類に特有な社会特徴の由来を探っている。


■著書■

『ゴリラ』(2005年、東京大学出版会)
『暴力はどこからきたのか』(2007年、NHKブックス)
『家族進化論』(2012年、東京大学出版会)
『15歳の寺子屋 ゴリラは語る』(2012年、講談社)
『「サル化」する人間社会』(2014年、集英社インターナショナル)
など多数。


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