8月2日 7時間目(19:00~)

山極 寿一 (京都大学 総長)

人間とゴリラの
コミュニケーション


夕食を終え、本日最後の講義がスタート。
生徒たちも、疲れを感じさせない元気な声であいさつしていました。
この時間は、ゴリラの遊びについてと、これまでの講義を踏まえ、人間と動物とのコミュニケーションについての議論を行いました。

はじめに、ゴリラの遊びについてのビデオで、ゴリラはフクロウなどの他の種の動きを観察し、一緒に遊ぶことができると教わりました。
それを受けて、「人が、言葉の通じない動物とコミュニケーションを取るにはどうすればよいか」というテーマについてみんなで議論していくことになりました。
塾生たちは、「頭をなでるなどのジェスチャー」「相手のそばでじっとする」「同じ目線で相手をする」など、積極的に意見を述べていきました。

食べ物をあげるという意見については、餌を与えられる環境にいない動物にとっては間違った手段であると解説しました。

その一方で、「言葉の通じない人とどのようにコミュニケーションを取るのか」という議論では、動物と同じような手段が有効でありながらも、「食べ物を一緒に食べること」「物をあげること」「音楽を一緒に演奏すること」など、高い共感能力を持ったことで生じた、人間的なコミュニケーション手段が存在することを解説しました。

講義のあとは質問の時間。ゴリラは鳴き声でもコミュニケーションが取れるのか、どうしてホモサピエンスはここまで知能が発達したのかなど、様々な質問が出てきました。


2コマにわたる講義と、生徒一人一人の質問に丁寧に答えてくださった山極先生。 講義終了後、生徒から惜しみない拍手が送られました。

(5期生・塩見亮介)


略歴

1952年生まれ。
学位:京都大学理学博士(1987年1月)
専門分野:人類学・霊長類学


1975年3月 京都大学理学部卒業
1977年3月 京都大学大学院理学研究科修士課程修了
1980年3月 京都大学大学院理学研究科博士後期課程研究指導認定
1980年5月 京都大学大学院理学研究科博士後期課程退学
1980年6月 日本学術振興会奨励研究員
1982年4月 京都大学研修員
1983年1月 財団法人日本モンキーセンターリサーチフェロー
1988年7月 京都大学霊長類研究所助手
1998年1月 京都大学大学院理学研究科助教授
2002年7月 京都大学大学院理学研究科教授
2009年4月 京都大学教育研究評議会評議員(2011年3月31日まで)
2011年4月 京都大学大学院理学研究科長・理学部長
(2013年3月31日まで)
2012年4月 京都大学経営協議会委員(2013年3月31日まで)
2014年10月 京都大学総長


日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長を歴任
日本アフリカ学会理事、中央環境審議会委員、日本学術会議会員 アフリカ各地でゴリラの行動や生態をもとに初期人類の生活を復元し、人類に特有な社会特徴の由来を探っている。


■著書■

『ゴリラ』(2005年、東京大学出版会)
『暴力はどこからきたのか』(2007年、NHKブックス)
『家族進化論』(2012年、東京大学出版会)
『15歳の寺子屋 ゴリラは語る』(2012年、講談社)
『「サル化」する人間社会』(2014年、集英社インターナショナル)
など多数。


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