8月5日 4時間目(14:30~)

山下 昌哉
(旭化成グループ フェロー)

「 電子コンパス 」の秘密


塾生が生まれたころ、電子コンパスの研究を始めたという山下先生。
携帯電話にGPSの搭載が義務付けられることが決定したことから、近い将来、歩行者ナビゲーションシステムが始まるのではないかと考え、そのためには地磁気を測定する電子コンパスが必要になるとの予想から、研究が始まりました。

携帯電話の中には、スピーカーやモーターなどの磁石がたくさん付いているため、地磁気の測定には、たいへんな困難が伴います。例えば、スピーカーは地磁気のなんと1000倍以上もの磁力をもっています。そういった環境の中にあるセンサで、いかに地磁気を測定するのか。発明は、一瞬のひらめきだったという先生。他社の電子コンパスは、面倒な調整をしてからでないと使えなかった中、ある時、携帯電話を使用する際に当然行う動作を利用すれば解決するのではないかとひらめいたそうです。


         コンパスのモデルを観察


電子コンパスを開発した後も、それを使ってなにができるかを考え続けたという先生。携帯電話の持ち方と連動する平面地図と立体地図の切り替えや、3次元空間のナビなどの提案を繰り返した結果、多くのスマートフォンに自社の電子コンパスが採用されることになったことを説明。そのひとつである、横浜のランドマークタワーからみた夜景とナビゲーションを組み合わせたアプリを実演してくださいました。

塾生からは、「常に磁気を計測し続ける仕組みは、電気を消費しすぎるのではないか」との質問が出ました。先生は、「スマートフォンなどにとってこの計算は一瞬で終わるほど簡単なので、ほとんど電気を食いません。また計測に関しても、もともとは測るたびに捨てていたデータを蓄積して使っているだけなので、ほとんど電気を消費しないのです。」と教えてくださいました。
また、「GPSなどにより取得した位置情報は個人情報であり、セキュリティ上の問題はないのか」という質問に対しては、「たしかに悪用されるリスクはあるが、リスクを恐れてメリットを捨てるわけにはいきません。なお、現在は位置情報の提供に関する確認をソフトが必ず行う仕組みになっています。」との説明がありました。


(2期生 田崎慎太郎)



略歴

1982年 3月
東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 博士課程修了
1982年 4月 旭化成工業(株) 入社
MRI(磁気共鳴断層像撮影装置)の開発に従事。
世界初の2次元フーリエ変換方式MRIを実用化。
(この方式は、現在全世界のMRIが用いている世界標準の技術となった)
1992年10月
(株)東芝との電池合弁会社:(株)A&Tバッテリーの設立に伴って旭化成へ戻り、電池開発研究所を設立。
LIB(リチウムイオン二次電池)の開発に従事。
(LIBは1980年代に旭化成が基本発明をした新しい電池技術)
2000年 4月
旭化成(株) 研究開発本部 中央技術研究所へ異動。
「携帯電話専用の電子コンパス開発」を独自に企画提案。
2003年 3月
電子部品研究所を設立し、初代研究所長として
世界初の「3軸電子コンパス」を実用化。
2006年 3月
旭化成エレクトロニクス(株) に電子コンパス専任のマルチセンサー事業グループを設立し、初代事業グループ長として、「技術開発」だけでなく、市場の拡大に貢献する「事業開発」を行った。
2010年 4月
旭化成エレクトロニクス(株) センサーシステム開発プロジェクト
プロジェクト長
2010年 10月
旭化成グループフェロー
2012年10月
旭化成(株) 融合ソリューション研究所を設立。 初代研究所長。

■研究実績■

1982年~1992年の約10年間、世界で未だ全身用MRIが数台しかなかった頃から、必須の診断機器として日本だけでも数千台に普及するまで、MRIの開発に従事した。


1992年~2000年の約8年間、世界で初めてLIBの量産が始まった時代から、ノートPC・携帯電話を初め、様々な移動機器の標準電源として広く普及するまで、LIBの開発に従事した。


2000年~2010年の約10年間、電子コンパスの企画・技術開発・事業拡大に従事し、単なる部品ではなく、「センサ」+「LSI」+「ソフトウエア」という新しい「ソリューション提供技術」に育て上げた。


Pick Up

これまでの夏合宿