レポート一覧

一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。



7月28日(金) 2時限目

三島 良直
東京工業大学 学長
より良い人間社会を創るために
~国連による持続可能な開発目標(SDGs)と科学技術の役割~



 「これからの未来を創るみんなには、どうやったら人間社会が良くなるのか、自分には何ができるのかを考えて欲しい。」「優秀な人ほど、社会に何ができるのかを考えることが本当に大切。」と塾生に語りかけ、講義を始めた三島先生。 「目指すべき人間社会の一つとして、“持続可能な社会”がある。」とおっしゃいました。
「社会を良くするといっても、負荷をかけて無理をすると長続きしない。だから、長期にわたって少しずつ良くしていくのが理想的なのです。」

 今回の講義のテーマである「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」で採択されました。
この目標は、「貧困をなくそう」「海や陸の豊かさを守ろう」「気候変動に具体的な対策を」などの17の項目によって構成されています。この講義では、一つ一つの項目に対して科学技術がどのような役割を果たせるのかを話してくださいました。

 三島先生が中でも強調されていたのが、「ジェンダー平等を実現しよう」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「つくる責任つかう責任」の3つです。
 新聞などでもさかんに言われているように、日本における女性の社会進出は、先進国の中でかなり遅れをとっています。大学教員も海外に比べてかなり少なく、三島先生が学長を務める東京工業大学では10%を下回るそうです。これについて先生は、「社会全体が損をしている。女性ならではの視点をもっと活かしたほうが良い。」と警鐘を鳴らしました。 産業と技術革新の基盤については、「“質の高い教育をみんなに”などの他の項目とも密接に関わっている。」と先生。「質の高い教育を受けられるようになると、技術開発が進みやすくなる。そこで得られた技術が、産業と技術革新の基盤をつくるのに活用され、より良い社会が実現する。」とのことです。

 塾生に、「将来、より良い人間社会をつくるのに何をしたら良いのか考えてほしい。ニュースや新聞などを通して、世界で何が起こっているのか、それに対して自分に何ができるのか考えてほしい。」
「勉強は、自分が社会に貢献する基礎力になるものだから、他の人に言われて勉強するのではなくて、自ら進んで勉強してほしい。」
「深みのある人間になれるよう、教養も身につけておくように。様々なジャンルの本を読んで、様々な考え方や見方を知っておくのは大事なこと。語学も英語以外にもう一ヶ国語話せると良いですね。」と具体的に今何をすべきか教えて下さった三島先生。最後は、「良い大学に入って良い会社に就職するだけではなくて、”地球人”としての役割をぜひ担ってください!」との熱いメッセージで講義が締めくくられました。


(5期生 逸見知世)


講師紹介

現職:
国立大学法人東京工業大学 学長

略歴
(学歴):

昭和48年 3月 東京工業大学 工学部金属工学科 卒業
昭和50年 3月    同    大学院理工学研究科金属工学専攻修士課程  修了
昭和54年 8月 University of California, Berkeley大学院材料科学専攻博士課程 修了

 

(職歴):

昭和54年10月 University of California, Berkeley,材料科学専攻 Assistant Research Engineer
昭和56年 5月 東京工業大学 助手 精密工学研究所
平成 元年11月   同    助教授 精密工学研究所
平成 9年 4月   同    教授 大学院総合理工学研究科材料物理科学専攻
平成17年 4月   同    評議員(平成18年3月まで)
平成18年 4月   同    大学院総合理工学研究科長(平成22年3月まで)
平成22年 4月   同    フロンティア研究機構長(平成23年10月まで)
平成22年 4月   同    センター長会議主査(平成23年10月まで)
平成23年 4月   同    ソリューション研究機構長(平成23年10月まで)
平成23年10月   同    理事・副学長(教育・国際担当)(平成24年10月まで)
平成24年10月   同    学長(現職)


研究業績:
1. S. W. Kim, Y. Mishima, and D. C. Choi: Effect of Process Conditions on the Thermoelectric Properties of CoSi; Intermetallics, 10 (2002) 177-184
2.  K. Yamamoto, Y Kimura, F. G. Wei, Y. Mishima: Design of Laves Phase Strengthened Ferritic Heat Resisting Steels in the Fe-Cr-Nb(-Ni) System; Materials Science and Engineering, A329-331 (2002) 249-254
3.  S.W. Kim, Y. Kimura and Y. Mishima: Effect of Partial La filling on High Temperature Thermoelectric Properties of IrSb3 Based Skutterudite Compounds; J. Electronic Materials, 33 (2004) 1156-1161.

4.  Y. Mishima, N. Yoshida, H. Kawamura, K. Ishida, Y. Hatano, T. Shibayama, K. Munakata, Y. Sato, M. Uchida, K. Tsuchiya and S. Tanaka: Recent Results on Beryllium and Beryllides in Japan; J. Nuclear Matr., 367-370 (2007) 1382-1386.         他 約150件


受賞歴他:
昭和54年 ASM, Scholastic Achievement Award
昭和62年 手島工業教育資金団 手島記念論文賞
平成 5年 日本熱処理技術協会 粉生賞
平成 6年 日本鉄鋼協会 西山記念賞
平成 7年 日本金属学会 功績賞
平成 8年 日本金属学会 論文賞
平成11年 ASM, The Lindberg Best Paper in Heat Treating Award
平成13年 日本熱処理技術協会 論文賞
平成14年 日本金属学会 学術功労賞
平成18年 日本熱処理技術協会 学術功労賞
平成21年 谷川熱技術振興会 粉生賞


前のページ次のページ