レポート一覧

一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。



7月28日(金) 4時限目

永井 良三
自治医科大学 学長 (元 東大病院長)

「医学と科学:さまざまな考え方を理解する」


 臨床医でもあり研究医でもある永井先生は、医学と科学技術という観点から、科学者は自然現象をどのような姿勢で捉えるべきか、社会とどのように関わりながら研究するべきなのか塾生たちに語りました。

「難しい話かもしれないけれど、今は分からなくてもいい。一生をかけて考えてみてください。科学とはそういうものです。」という先生からのひとことで始まった講義。
まずは科学の歴史について、古代ギリシアのアリストテレスから始まり、近世ヨーロッパのデカルトやカントのような哲学者など様々な人たちが考えてきた、「物事の現象をどのように捉え解明するか、その為に必要な姿勢は何か」を時代に沿って紹介してくださいました。
特に先生が強調したのは、「自分の感覚は正しいとは限らない。複雑な問題を細かく分けて順序立てて論理的に考えることが大切」、「理論立てていればどんな仮説でもいい。そこに出てきた疑問を一つ一つ調べて少しずつ改良していけばいい。」ということでした。

 次に、医療における科学技術の話。主に、光の色と物の色との関係や、それを応用した技術の紹介をしてくださいました。まずは、レーザー技術を応用した内視鏡による画像がスクリーンに映し出されました。塾生からは、「気持ち悪い」などの声が上がりつつも、目は画像に釘付けに。
他にも、赤い風船は赤いレーザーと青いレーザーのどちらを当てると割れるか、焼き芋はなぜ熱い石で焼けるのか、サーモグラフィーでどうして人の体温が分かるのかなど、身近な話を織り交ぜつつ、様々な最先端の医療技術の話をしてくださいました。

 永井先生は最後に、医療をはじめとした科学は、様々な視点で研究をする必要があると語りました。例えば、ある治療法を研究する時は、そのメカニズムを考えるだけでなく、統計的に調べてその効果が確認されるか、社会制度・福祉制度的に無理はないか、そして、患者個々人に合っているかなど、様々な視点と考えに立って取り組まなければならないことを説明し、塾生たちに、「人の社会にどのように役に立てるか考えながら仕事をしてほしい」と語り、講義が終わりました。


(5期生 宮園健太郎)

 

講師紹介

研究内容:
心臓病の臨床医として仕事をしながら、心臓、血管、代謝システムの分子生物学を開拓してきた。


略歴:
昭和49年 東京大学医学部医学科卒業
昭和58年 米国バーモント大学留学
平成5年 東京大学医学部第三内科助教授
平成7年 群馬大学医学部第二内科教授
平成11年 東京大学大学院医学系研究科循環器内科教授
平成15年 東京大学医学部附属病院長
平成21年 最先端研究開発支援プログラム「未解決のがんと心臓病を撲滅する最適医療開発」 中心研究者
平成21年 東京大学トランスレーショナルリサーチ機構長
平成24年 自治医科大学学長


受賞歴:
平成10年 ベルツ賞
平成12年 持田記念学術賞
平成14年 日本動脈硬化学会賞
平成18月 日本医師会医学賞
平成21年 紫綬褒章
平成22年 日本心血管内分泌代謝学会 高峰譲吉賞
平成24年 European Society of Cardiology (ESC) Gold Medal
平成27年 岡本国際賞


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