レポート一覧

一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。



7月28日(金) 6時限目

渡部 潤一
国立天文台 副台長



 「宇宙はまだまだ謎に満ちている。」
2013年の観測が予測されていたにも関わらず、蒸散してしまい観測できなかったアイソン彗星についての話から講義は始まります。

「私たちは、アイソン彗星は蒸散せずに観測できることを確信していました。」
とある企業のホームページでの特集。飛行機から観測するツアー。NHK特別番組。先生ご自身のアイソン彗星に関する著書。近年稀にみる天体ショーに期待がかかっていたことが分かります。

 しかし、実際は観測できず、テレビの取材班に密着取材を受けていた先生も「宇宙のいろんな現象の予測は難しいと、逆に知ってもらういい機会になったのかな。」とコメント。


のぞき込む 画面に光る 筋雲に 思い至らぬ 未知の振る舞い
(当時の渡部先生のTwitterより)

短歌から先生の込められた思いが伝わってきます。

“天文学では予想外な現象も起こる“ということを、ご自身の体験談を元に、ユーモアを踏まえて分かりやすく説明してくださいました。そして、このように、謎がある、予測できない面白さが、渡部先生が天文学者になるきっかけだったそうです。


いよいよ、宇宙、そして、宇宙生命に関する謎に迫っていきます。
「天文学者は、世界各地にある望遠鏡を使っていろいろな謎に挑んでいます。」と渡部先生。 チリにあるアルマ望遠鏡は、“東京から大阪の1円玉が見える”程の分解能を持つそうです。

そして、渡部先生は断言します。
「地球以外に生命は存在するのか。その答えは5~10年後に答えが出ます。」
数年後にできる複数の30m級の鏡を使った望遠鏡によって、地球外生命体に関する証拠に迫れるようです。

 では現在はどこまで分かっているのでしょうか?
生命をはぐくむ材料は?水は?地球のような水の惑星は他にもあるか?水の惑星に生命は誕生するのか?どの生命も進化し文明を持つのか?
「生命の材料である元素は、星の誕生、成長とともに星で作られます。そして、星が死ぬとき(超新星爆発)に、その材料は、宇宙に放たれます。」


生命の材料が星でできている…。
塾生たちは、渡部先生の話に引き込まれていきます。
「水はどこにでも存在しますが、宇宙ではほとんど氷の状態。液体の形で存在する場所は本当に限られています。」

 水が存在し、生命が存在し得るハビタブルゾーン(生命存在可能領域)に入る地球型惑星の探索は、ケプラー宇宙望遠鏡の打ち上げとともに急速に進み、生命が存在している可能性のある星がたくさん見つかっています。

そして、そんな宇宙をMitaka(http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/)で体感した塾生たち。
「人類はやっと他者の存在を認識し、宇宙の中心でないことを理解し始めました。」
長年、天文学者として活躍されている渡部先生は、塾生を諭すように説きます。

「みんなは、大人になるときに挫折を繰り返して、成長していきます。」
「人類も、知的文明としてはひよっこ。大人の知的文明になるため、未熟な技術と思想で様々な失敗を繰り返している途中なんです。」
「うちでやっていることは、向こうでもやっている。育成塾もやっているかもね。あっ、うちって銀河系のことね。」
笑いが起きながらも、新たな視点に触れた塾生の目は、さらに輝きを増したような気がします。



最後には、4人の塾生から積極的に質問が出ました。
渡部先生に直接疑問をぶつけることができる、せっかくの機会。
中村くんは、先生とレベルの高い議論になっていました。

空を見上げるだけで宇宙。
広大な宇宙にいるはずの生命に思いを馳せて、星空を眺めよう。

渡部先生の思いは、中学2年生の塾生の頭だけでなく、心にも残ったのではないでしょうか。


(2期生 福田宏樹)

講師略歴

現職:
自然科学研究機構 国立天文台副台長、教授
総合研究大学院大学:数物科学研究科天文科学専攻 教授、理学博士。

 

1960年 福島県会津若松市生まれ。福島県立会津高等学校卒。東京大学理学部天文学科卒。 1987年 東京大学東京天文台助手、国立天文台・光学赤外線天文学研究系・助手、同広報普及室長、 天文情報センター長、教授を経て、2012年より現職。
太陽系の中の小さな天体(彗星、小惑星、流星など)の観測的研究。特に彗星・流星を中心に太陽系構造の進化に迫る。国際天文学連合では、惑星定義委員として案の策定に従事し、準惑星という新しいカテゴリーを誕生させた。一方で、天文学の広報普及活動に尽力している。


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