レポート一覧

一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。



7月29日(土) 4時限目

下田 治信
国分寺市立第一中学校

「飛ぶ種を研究しよう」


 「1時限目の中西先生の講義でも植物の話がありましたが、植物には、まだまだ不思議なことがあります。この時間では、種の話をしようと思います」と切り出して、下田先生は講義を始めました。

 種子の役割は、子孫を増やすこと。一度生えてしまったら同じ場所に生え続けなければならない植物にとって、唯一、移動することのできる状態が種子だといえます。
植物の種子は、さまざまな手段で移動するそうです。たとえば、種子を動物に運んでもらうのもそのひとつ。トゲや粘つきを備えたものや、赤い実をつけて目立たせるもの、アリの餌を作っておびき寄せるもの、というふうにさまざまな工夫が見られます。


 今日のメインテーマである「飛ぶたね」も、多様な飛び方があります。まず、先生が例に挙げたのはタンポポとアザミでした。これらの種は綿毛によって空を飛び、広がっていきます。

 次に、先生が紹介したのは、ニワウルシの種です。配られた実物の種子の形を観察するよう先生は促しました。小さな丸い実を薄い翼が取り囲んだ形をしています。手を伸ばして、高いところから落としてみると、細かく回転しながらゆっくりと落下しました。

 細長い折り紙とクリップが配られ、実験が始まりました。ハサミとノリで切り貼りして、ニワウルシのようにゆっくり落下する種子の模型をつくります。「実物を観察して、よく回転するように工夫してください」と、先生がアドバイスをすると、塾生たちはいろんな角度で種子を眺めては、自分の作品に手を加えていきました。五分たった頃には、あちらこちらで見事に回転する模型が見られるようになりました。


 つづいては、ツクバネの種です。先生が実物を落としてみると、ヘリコプターのように回転しながら、ゆっくりと落ちていきます。塾生たちからは、歓喜の声が上がりました。

 実物を観察して、同じように模型を作ります。完成したツクバネの模型を風洞に入れると、風をよく捉え、くるくると回転し、なかなか落ちてきません。羽の大きさや形、ひねり具合、重りの重さなど、塾生たちそれぞれの工夫が伺えました。

 最後に先生が紹介したのは、東南アジアの植物・アルソミトラです。グライダーのように平べったく大きな翼があります。条件がよいと400メートルも滑空するそうです。
実験の最後は、その模型作り。薄い発泡スチロールの板を材料にして、工作が始まりました。いざ、作ってみると、くるくると回転してしまったり、失速してしまったり、実物のようにきれいに飛ばすのは難しいようです。しかし、試行錯誤を重ねていくうちにきれいに飛ぶ模型が現れてきました。


※映像でも見られます

 全員の模型が完成したところで、研修所内の吹き抜けで飛ばしてみることに。
いっせいに模型を飛ばすと、きれいに螺旋を描いて滑空する姿に、大歓声が沸き起こりました。

 実験の終わりに、先生は、「同じ飛ぶ種でも、いろんな飛び方がある。植物がどんな形をしているのか、普段見過ごしている部分がたくさんあると思います。人間は自然の中にあるいろんなものを真似て、利用してきた。植物や自然を観察してみてください。観察して工夫することは、創造性の助けになると思います」と締めくくりました。



(1期生 佐々木駿)

 

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