レポート一覧

一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。



7月29日(土) 5時限目

兼 龍盛
江戸川学園取手中・高等学校

「抽出の原理を知ろう」



 「育成塾では、私にとっても実験名人の先生の講義を聴くのが面白い。」と、はじめた兼先生。専門は化学。いろいろな物質を知る学問です。この時間は、物質の分離方法の一つ、“抽出”をテーマに実験です。

 「緊張しているでしょうから、先生の得意なものを」ということで、塾生2人を1人ずつ前に呼び、色付きの溶液が入ったペットボトルに白い粒を入れ、振らせます。すると…色が変わりました。塾生から歓声が上がります。「今日これからみんなにやってもらう実験で、この実験のことがわかるようになります。」と、兼先生。塾生たちの期待が膨らみます。

 塾生たちは、机上に、青い粉(塩化銅(II))と無色透明な液体(ヘキサン)の入った試験管を用意し、これらを混合させるように指示されます。「一生懸命やっても、なかなか溶けません。」と先生。しかし、ここに水を加えると…青い粉が溶け、青色の上層と、無色の下層に分かれました。


 ここで先生は、「この現象をあたまで考える」話をします。
「ヘキサン分子はまっすぐな棒の形をしているが、水分子は折れた形をしている。」「水分子は折れているから、電荷にわずかな偏りが出る」「この偏りが、本実験の本質ある」と、スライドショーでわかりやすく説明します。


 ここで先生は塾生に問いかけます。
「2層に分かれた状態で、どちらが水でどちらが油(ヘキサン)なのかを調べるには、どうすればよいでしょうか?」すぐに、とある塾生から反応が。「少し水を足して、増えた方です。」「正解、やってみよう。」と先生が言うと、塾生たちは水を加えはじめます。これにより、水が、二層に分かれたうちの下層であることが確認されました。これをろ過すると…青色の層の溶液だけがろ紙を通過し、ヘキサンの層はろ紙上に残りました。分離成功です。


 分離の実験はまだまだ続きます。
まず、ろ紙を通過した青色の溶液にうがい薬を加えます。
そこに、先ほどろ紙上に残ったヘキサンを試験管に加えて振ると、赤色の上層と、黄色の下層に分かれました。「うがい薬中のヨウ素が下層から上層に移りました。」と、兼先生が説明します。


 溶液を変えて、実験は続きます。
「先生は、身近なものでできる実験を考えています。」と話す兼先生。取り出したのは、ヨードチンキと、C. C. Lemon。これらとヘキサンを試験管内で混ぜ、再び分離させようという実験です。

 二層に分かれた溶液が入った試験管を振ってみますが、ヨウ素の赤色は出てきません。
ここでオキシドールを加えてみると…すぐには何も起こりませんが…しばらくすると、下層が黄色くなりました。2時限目に大西先生が扱った、時計反応が起こったのです。
さらに、試験管を大きく振ると…上層の溶液が、赤色になりました。

 ここで、先生は、冒頭の演示に用いられた白い粒を配ります。
「この粒は、実はカルキ抜きでした。」
この粒を試験管に入れると…下層の色が消えました。
最後に、この試験管を思いっきり振ると…上層の色も消えてしまいました。
試験管の溶液全体の色が消えたところで、実験終了です。

 「すべての原子は、電子を引き寄せる力が異なる。電気陰性度というものを高校で習うので、詳しくはそこで。さらに突き詰めると…なぜ引き合う力が異なるのかは、まだはっきりとはわかっていない。興味があれば、大学で研究してみてください。」と兼先生。
未知のことの一端に触れられ、この時間は終了しました。


(5期生 矢吹凌一)

 

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