一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。
大鶴 啓介
東京大学 理科一類 / 7期塾生
(地理オリンピック)
育成塾の7期生で、現在は東京大学理科一類1年生の大鶴さん。
国際地理オリンピックの代表選考を兼ねた科学地理オリンピック日本選手権に3度、国際地理オリンピックには昨年出場し銀メダルを獲得した経歴をお持ちです。
「地理というとどんなイメージでしょうか」という問いかけから講義をはじめた大鶴さん。
地理は、中学や高校では文系科目に位置づけられており、暗記科目という印象が強いかもしれません。先生自身、「自分が塾生のときに地理の話を聞いていたら、理科好きの塾生が集まる育成塾で取り上げることに違和感を覚えたかもしれない」と言います。
しかし、「地理オリンピックで問われるのは知識ではなく、考える力である」と、大鶴さんは語ります。
地理オリンピックで出題される問題は、「Multimedia test」「Written response test」「Fieldwork test」の3種類です。
Multimedia testでは、図や写真、表、グラフ、地図の読み取りを選択式で問われます。
Written response testは、記述式で地形などの成因や、地理的現象が起こる理由などを説明するものです。
そして、Fieldwork testは、地理オリンピック独特の課題で、実際にフィールドワークを行ったうえで調査内容についての設問に答える形式です。地図の作成、現状の説明、問題点の指摘、まちづくり構想の提案などが求められます。
また、国際大会では全ての課題が英語で出題され、解答も英語で作成しなければならないそうです。
これらの問題を解くにあたって、最低限の知識は必要ですが、重要なのは図表の読解力、論理的思考力、そして文章やスケッチでの表現力。英語力については、文法が不完全でも採点者に伝えることができれば大丈夫で、あまり心配しなくてよいとのこと。また、2015年以降の日本代表選手はほとんどが理系だそうです。文系よりむしろ理系の方が解きやすい問題なのかもしれません。
ここで、科学地理オリンピック1次予選でどのような問題が出題されるのかを体験しました。
5問のうち2問は、大鶴さんが今日のために作ってきてくださった問題です。
写真に写った山の形と与えられた地図から撮影地点を推定する問題や、人口密度や人口増加率の表から北海道の都市を分類する問題、気温と降水量のグラフから都市を推定する問題などが出題され、みんな積極的にチャレンジしていました。ほとんどの塾生が正解した設問もありました。
講義の後半では、国内大会から世界大会までの流れや日程、ご自身の体験談などを話してくださいました。特にフィールドワークについては、毎回、当日に現地にいくまで場所が知らされないため、独特の期待と緊張があるそうです。また、2016年の世界大会では雨が降るなかフィールドワークを行い、資料がずぶぬれになって管理に苦労した話など、地理ならではの苦労も聞くことができました。
この講義を通して、これまであまり地理を科学として意識してこなかった塾生も、その楽しさに気づけたのではないでしょうか。大鶴さんに続く塾生がでてくることを願っています。
(2期生 田崎慎太郎)
講師紹介
現在:
東京大学 理科一類 1年
略 歴:
2017年 渋谷教育学園幕張高等学校卒業
受賞歴:
2016年 第10回科学地理オリンピック日本選手権 金メダル
第13回国際地理オリンピック北京大会 銀メダル