レポート一覧

一流の講師陣による講義・実験の様子をレポートします。



8月2日(水) 3時限目

藤川 淳一
東レ 常任顧問


 今回、研修センターを利用させていただいている東レ株式会社の常任顧問 藤川淳一先生の講義です。
「企業で働く研究者は数多くいるが、そうした人たちがどのような仕事をしているのか知ってほしい。」と先生。まずは、東レが手がける様々な事業を紹介するビデオとともに講義開始です。

 まず、東レのグループ企業の数は国内より海外の方が多いと知り、塾生はびっくりしていました。一方で、東レの研究・技術開発要員の約4,000人のうち、約7割が日本にいること、そして約5割が本社組織である東レに所属しており、研究開発機能が日本に集約されていることなどを紹介していただきました。

 日本全体での研究者は、2013年で約84万人。「研究というと大学や産業機関で行われているイメージが強いかもしれませんが、約84万人のうち約48万人が東レのような民間企業で働いているのです。」というお話に、意外そうな顔をする塾生も少なくありません。


 東レは、“わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します”という企業理念を実現するために、どんな活動をしているのか。藤川先生は、「科学に基づく研究・開発を通じ先端材料を創り出し、解決すべき問題へソリューションを提供する」、すなわち”innovation by Chemistry”という言葉を紹介してくださいました。

 そして、東レの事業についての具体的な話に移ります。
初めに、炭素繊維について。まず、塾生に炭素繊維の現物を見せていただきました。先生は、炭素繊維の製造プロセスや、医療分野で活用が近年急激に伸びていること、航空機に炭素繊維を用いることにより軽量化・燃料の節減に大きな効果があることなどを紹介され、炭素繊維がいかに将来有望な素材であるかを解説していただきました。

 続いては、海水淡水化膜。人口増加に伴う水不足問題への対策として、東レが注力している事業のひとつです。サウジアラビアなど中東乾燥地域で行われていた、高コストかつ炭素ガス排出量の多かった蒸発法に代わって膜処理法が登場したことで、炭素ガス排出量が1/5に抑えられただけでなく、他の有害物質の除去にもつながりました。
また、東京の水はおいしいとよく言われるのは、従来の塩素消毒から膜処理法に転換したことでカルキ臭がしなくなったことが理由であるとのこと。身近なところで先端材料の恩恵を受けていることに気づかされます。


 藤川先生は講義の最後に、「科学はいろいろなことができます。」と前置きし、次のような言葉を送ってくださいました。
「夢を持ち続けることが大切です。大きな志・高い目標をもって進めば、夢は必ず実現します。そのためには、自然の素晴らしさ・不思議さを観察して、素直に驚き、感動する感性をもつこと。様々なことに興味や好奇心をもつこと。夢をもつこと。そして、その夢をなんとしても実現するという意志を持ち続けることが必要です。」

 炭素繊維と海水淡水化膜という、東レが世界で最大のシェアを持つ2つの事業を中心にお話を進め、塾生の質問にも丁寧に答えてくださった藤川先生。
塾生の中にも、将来研究者として活躍する人が出てくると思いますが、講義の各所で登場した、「お客様に快くものを買っていただくためにはコストを下げるしかない。しかし、私たちは企業である以上損をしてモノを売ることはしない。そうしたことから、コスト意識を持った研究者は非常に求められる存在なのです。」というお言葉の中に、企業の責任と目的の両立の難しさを感じさせられた90分でした。


(7期生 因間朱里)


講師紹介

略歴:
1970年3月 東京大学大学院 工学系研究科 原子力工学 (放射線高分子化学)
修士課程修了
1970年4月   東レ株式会社 入社
1970年5月   開発研究所
1983年4月   開発研究所主任研究員
1987年3月   電子情報材料研究所主任研究員
1989年10月  電子情報材料研究所情報材料研究室長
1994年5月  滋賀事業場電子材料製造部長
1995年11月 滋賀事業場オプティカル生産部長
1998年6月 技術センター企画室次長
2001年6月  経営企画第2室長
2002年6月  取締役 経営企画室長
2004年6月  常務取締役 経営企画室長
2007年6月  専務取締役 電子情報機材事業本部長
2010年6月  代表取締役副社長 経営企画室長
2014年6月  常任顧問
2015年4月 国立研究開発法人産業技術総合研究所理事(兼務)


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