8/10 実験① 「溶ける」とは何か? 山口 晃弘 全国中学校理科教育研究会 会長

第15回夏合宿、最初の「実験」は、山口先生による「『溶ける』とは何か?食塩で考えよう」です。塾生たちには、事前に実験キットが送られており、「見た目では区別できない、水道水と食塩水を区別するにはどんな実験をすればよいか」という宿題が出されています。

まず、塾生たちは8人グループで分かれ、それぞれが取り組んだ実験方法を発表しあい、全部で何通りの方法を考えられたかをカウントし、その中で最も独創的なものを選びます。

各グループの部屋では、口頭で議論したり、各々が取り組んだ実験の成果をまとめたスライドや写真を画面共有したりしながら、発表し合いました。水を蒸発させる、物を浮かせる(浮力)、凍らせる、追加で食塩を溶かすなど、多くの塾生が思い浮かんでいたものもあれば、独創的なアイデアを出す塾生もいました。

独自に資料を作っている塾生も。
カイワレを植えてみる、パンを焼いてみるなど独創的な方法も飛び出しました。

約30分後、塾生全員がZoomの同じ部屋に再集合し、各グループの最も独創的な方法を発表しあいました。塾生たちはみな、他の班でどのようなアイデアが出されたのか、興味津々です。
「石鹸を入れたら差が出た」「墨を入れたら差が出た」など様々な方法を試し、その理由を調べた成果を発表する塾生もいました。さすが、創造性の育成塾の塾生です!理由のわからなかった現象について、深く調べる姿勢が身についています。

発表後、この実験の本題である「溶けることを粒子で考えよう」に入っていきます。まず、小学校・中学校の理科の教科書を引用しながら、「溶解」の復習から。その中の一文、「固体が水に溶けるとき、集まっていた粒子がばらばらにわかれ、水の粒子の間に入り込んでいく」という部分を取り上げ、「不思議に感じる部分はありませんか?」と山口先生は問いかけます。そして、「集まっていた粒子がばらばらにわかれ」という部分を示し、「何でそうなるか、説明できますか?」と山口先生。中学理科では勉強しない範囲を、粒子同士の「引き合う力」の概念から説明しました。

ここからは、いよいよ塾生たちが自ら手を動かして実験をする時間です。この記事を執筆している私も、実験に臨んでみました(写真)。事前に送られてきた、m & m’sチョコレートを、水と湯につけて染料の溶けていく様子を観察します。写真のように、水と湯で差が見られます。

左:水 右:お湯

実験の後、「なぜ水と湯で差が出るのかを粒子で考えてみましょう」ということで、塾生たちは、4人のグループで議論しました。その後、先生のもとに再集合した塾生たち。答えを教えてくれるのを待っていた…かもしれませんが、「答えは言いません」、と山口先生。考えることが大事なので、答えは言わないそうです。

最後に、「この動画を見て課題を発見してください。」という問題が出されました。

動画は、水が入ったプリンカップの中にm & m’sチョコレートが沈んでおり、そのカップを横から撮影されています。先ほどの実験では、色素の溶けだし方を真上から観察しましたが、今度は横から見てみよう、というわけです。その様子を見て何か気づいた塾生は、チャットにその内容を入力していきます。多くの塾生は、「色素が上に行かない」という、山口先生が捉えてほしかった不思議に気づくことができていました。

最後に、「なぜこのような現象が起きたのか。自分なりの回答を考え、それを示すための実験を考えてください。」という課題が与えられました。塾生たちは、事後の振り返りアンケートで、これに回答する予定です。実験で得られた現象のメカニズムを仮説として立てて、それを実験で検証する。そんな科学の重要なプロセスを学べた実験の時間でした。

【記事:矢吹 凌一(5期生)】

★山口先生から、振り返りの動画が届きました。

20210810 食塩を用いた溶解の実験
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