8/11 実験③ 空間的な見方で視野を広げよう 上田 尊 練馬区立開進第四中学校

3日目の最後は、練馬区立開進第四中学校教諭の上田尊先生による実験です。

「この月を見て、この時の時刻がわかりますか?」

上田先生は、少し傾いた上弦の月の図を見せて塾生に問いかけます。すぐに答えられる人はほとんどいません。上田先生は、「空間的なものの見方を身に着ければ、この問題が、暗記しなくてもわかるようになります。」と言いました。

塾生たちには、事前に、自分の住んでいる地域の太陽の動きを記録し、日の入り・日の出・南中時刻、南中高度などを調べるという宿題が出されていました。最初に、グループに分かれてその宿題の結果についての話し合いをします。全国から参加する塾生たちは、様々な地域の観測結果を共有し、地域による結果の違いを考察します。

「北の方が、南中高度が低いね。」「西に行くほど南中時刻が遅いから、これは地球が西から東に自転するのと関係があるんじゃないかな?」様々な議論を活発に行う塾生たち。また、「地球の地軸が傾いていることが関係しているのではないか」という考察も出されました。

上田先生は、「昔の人はこれらの観測結果を用いて、地球の地軸が傾いていたり、公転したりすることに気づいたんだよ」と言い、観測結果を用いて空間的な視点で考えることの有用性を塾生に伝えます。

ここからは、事前に塾生のもとに届けられた実験キットを使います。

塾生たちは、ホワイトボードマーカーで書き込める天球儀、太陽と時刻の目盛りがかかれているシートの輪、黄道12星座がかかれているシートの輪などを事前に作成しており、それらを組み合わせて、太陽や星、星座、月の動きを確認していきます。

「こう動かすと、午後9時の空に見える星座が現れます。」「天球儀の内側から見ると、星が教科書の図の通りの動き方をすることがわかりますね。」と、一つ一つ、カメラの角度を変えながら丁寧に説明していく上田先生。塾生たちは、学校で教わる星や月の動き方を、手元の天球儀を使って実際に体験し、空間的に理解することができたのではないでしょうか。

そして、実験の最初に出した月の時刻の問題を、今度は天球儀を使って考えてみます。月を模したシールを貼ってシートを動かして合わせると、簡単に答えがわかりました。

その後、上田先生は説明を続けます。例えば、現在、私たちは天の川銀河の端の方にいることがわかっていますが、誰も天の川銀河を外から直接見た人はいません。それなのになぜわかるのかというと、地球から天の川を見た時、天の川の外側を見た時よりも中心を見た時の方がたくさんの星が見えることから、予想しています。このように、私たちが見ることができる情報を、空間的な視点で処理することで、今までわからなかったことがわかってくる。そのことを、しっかり理解してほしいと、上田先生は話しました。

その後設けられた放課後の自由時間でも、積極的に質問や説明を聞きに行く塾生がたくさん見られました。

【記事:田中 咲絵(14期生)】

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