永井先生の「今の若者は、事実の羅列として物事を捉える傾向がある」との厳しい言葉から講義が始まりました。
「さまざまな考え方を理解する」をテーマにしたこの講義では、まず、アリストテレス等、古代から続く「科学研究」「哲学」の歴史から紹介して下さいました。
その後は、「腎臓の遺伝子が、実は心臓の機能を制御している」という研究について。各臓器の専門的な知識だけでなく、他の臓器との関係を見るという視点も、とても重要だということが分かった事例でした。
続いて、科学が臨床医学分野で活用されている例が示されました。
青色レーザーを使用した内視鏡検査で早期がんの発見が簡単になったことをはじめ、光吸収率の違いによるパルスオキシメーターの使用、メスの代わりにレーザーで実施する手術、X線写真等。これらの技術が、中学校で学習する基礎的な科学から成り立っていることに驚いていました。更に先生は、「臨床医学とは『社会・行政』『個々の患者』『統計』『疾患や検査のメカニズム』の多くの要素への理解から成立している」と仰っていました。「専門的な知識だけでなく、基礎に立ち返ったり、様々な角度から医学・社会を捉えたりすることが重要です。そして、仮説を壊していってほしい」とメッセージを下さいました。
塾生達は積極的に質問をしており、熱心に受講している姿が印象的でした。
「将来、医学以外の分野に進んでも、多様な視点や仮説を疑うことは必要になります。」
永井先生のメッセージは大学生や大人にとっても重要ですが、中学生の塾生の心にも刻み込まれたと思います。
【記事:古川 舞(10期生)】
自治医科大学 学長
東京大学名誉教授
宮内庁皇室医務主管
厚生労働省社会保障審議会委員 他
■研究業績
心臓病の臨床医として仕事をしながら、心臓、血管、代謝システムの分子生物学を開拓。最近は、医療のビッグデータ収集と解析、人工知能による診断法開発なども行う。
■受賞歴
昭和57年 日本心臓財団 佐藤賞
平成10年 ベルツ賞
平成12年 持田記念学術賞
平成14年 日本動脈硬化学会賞
平成18月 日本医師会医学賞
平成21年 紫綬褒章
平成22年 日本心血管内分泌代謝学会 高峰譲吉賞
平成24年 European Society of Cardiology (ESC) Gold Medal
平成27年 岡本国際賞
平成29年 武見記念賞