小笹 哲夫 開成中学校・高等学校 教諭「溶媒と温度による溶液の色の変化」
「今日は、色を覚えるというよりも、なぜそうなるのかが分かるようになってほしい。」と講義を始めた小笹先生。早速、赤くなった塩化コバルト紙をドライヤーで乾かして青色に変化させると、塾生は興味津々です。なぜ、塩化コバルト紙は青くなったのか…? この時間は“溶液”と“色”をテーマにしたいくつもの実験を行います。
初めは、塩化コバルトを水に溶かす実験です。塾生たちは二人一組になって実験を進めます。慣れない試験管での撹拌に苦戦しながらも、赤い塩化コバルトの粉を水に溶かしきると、赤色になりました。
続いては、塩化コバルトをエタノールに溶かす実験です。ピペットの使い方について先生の説明を聞いた後、塾生たちは班で協力しながら、塩化コバルトの粉をエタノールに溶かします。すると、先程とは異なり、塩化コバルト溶液は青色になりました。その理由について、「試験管には水が入っていないですよね。塩化コバルトは水がない状態だと青くなります。」と先生は説明します。
そして、「それでは、塩化コバルトを水とエタノールに溶かすとどうなるのでしょうか。」と、小笹先生。塾生たちは、各々色を予想しながら、実験で検証します。水とエタノールが適度な割合になると、溶液の色は「ラベンダー色」になりました。
次にこの溶液を二等分して、それぞれの試験管を氷水とお湯につけてみます。「ピンクだ。」「ちょっと青くなってきた。」と塾生たちの楽しそうな声が響きます。氷水に入れた試験管は赤く、お湯に入れた試験管は青くなりました。先生は、「皆さんはお風呂に長く入ると赤くなりますよね。コバルトは逆で熱いと青く、寒いと赤くなるんです。」と解説しました。
続いて、先生は問いかけます。「試験管の色を二層にするにはどうすればいいでしょうか。」塾生たちは、お湯につけていた試験管を氷水に、氷水につけていた試験管をお湯につけて色の変化を見ます。すると、お湯につけていた試験管を氷水に入れた時だけ、色がきれいに二層になりました。この結果に塾生たちは「温かいと上に行くから混ざってしまうんだ。」と今までの知識を活用して考察をしていました。
ここからは、銅に関する実験です。緑青の塩化銅の粉末に少しずつ水を加えていくと、緑から青に水溶液の色が変わっていきました。興味深そうに見る塾生たちに、「銅イオンがCl(塩素)に囲まれているか、水に囲まれているかで色が違うんですね。」と先生は説明します。ここで、先程のコバルトの実験のように水の量を調整して、青と緑の中間色の水溶液を作ります。この溶液を二等分して、それぞれをお湯と氷水につけると、お湯では緑、氷水では青く変化しました。
次に銅イオンがアンモニアに囲まれたらどうなるかを検証する実験です。塩化銅に少しずつアンモニア水を加えると、青白色から濃青色に変わりました。
「ここで去年を思い出してください。」と、先生は中学一年生で行うアンモニアの噴水実験のスライドを見せました。先ほどの実験結果を、アンモニアの噴水実験に応用するとどうなるでしょうか。塾生たちは活発に発言します。そして、「濃い青の噴水が徐々に白く濁った青に変わる」という予想を立てました。実際に先生が実験をすると、予想通りに噴水の色が変わっていきました。実験の成功に塾生は歓声や拍手を送ります。
最後に、今回の実験のキーワードとして「クロミズム」の説明をした後、先生は「きれいだな、で終わるのではなく、現象には背景があるので、ミクロな視点で物質がどうなっているかを調べてみてほしいです。理科に限らず、興味がわいたことはぜひ極めていってください。」と講義を締めくくりました。そんなメッセージを受け取った塾生の目は輝いていました。
(11期生 岸田 彩花)