各分野で活躍する講師陣の略歴と、講義テーマをご紹介します。

五神 真 創造性の育成塾 塾長
国立研究開発法人理化学研究所理事長・東京大学大学院理学系研究科教授

講義テーマ

光科学の最前線への招待(東大総長、理化学研究所理事長から見た光科学の最前線)

学生時代に「ガラスはなぜ透明か」ということを物理学で考えたらどうなるか、ということがきっかけで研究に入り込み、気がつくと40年余り、光科学や光量子の物理学研究の最前線でスリルあふれる研究人生をおおいに楽しんできました。この間、レーザー技術や半導体エレクトロニクスの飛躍的な進歩があり、光の物理学も飛躍的に進歩しました。学生当時には想像できなかった科学の発展を国内外の仲間や学生達と共に体験することになりました。そんな中、2015年から6年間東京大学の総長となり、また今年の4月からは理化学研究所の理事長に就任し、桁違いに広く、そして深い知の世界が広がっていることを体感しています。光の物理学の面白さを紹介しながら、皆さんに科学研究がいかにワクワクするものか、お伝えしたいと思います。

現職

国立研究開発法人理化学研究所理事長
東京大学大学院理学系研究科教授

略歴

1973年私立武蔵高校卒業、1980年東京大学理学部卒業、1982年同大学院理学系研究科物理学専門課程修士課程修了。
1985年理学博士(東京大学)。1983年同大学理学部助手、1998年東京大学大学院工学系研究科教授、2010年同理学系研究科教授、2012年同副学長、2014年同理学系研究科長を経て、2015年4月から2021年3月まで東京大学第30代総長。
2021年4月から同理学系研究科教授、2022年4月から理化学研究所理事長。
(継続:東京大学教授・クロスアポイントメントによる)その他、日本学術会議会員(第23、24期)、未来投資会議議員、科学技術・学術審議会委員、産業構造審議会委員、知的財産戦略本部本部員などを務め、現在は、経済産業省半導体・デジタル産業戦略検討会議・有識者委員、内閣府・量子技術イノベーション会議・座長、Beyond5G推進コンソーシアム・会長他。

研究

専門は光量子物理学、物性物理学。光量子物理学研究の第一人者であり、光と物質の相互作用と量子現象の研究、コヒーレント光技術、ナノ構造と光の相互作用に関する研究といった、光量子科学の広い分野を研究対象とし分野をリードする研究を推進。これら学術の産業応用への重要性、最先端の国内外の研究者連携のプロジェクトも多数統括してきた。2015年から東京大学総長として執務を行いながら、現在も科研費研究代表者としても研究・論文執筆活動を続けている。

大島 まり 東京大学 生産技術研究所 教授

講義テーマ

医用画像×シミュレーション×AI ~医療の新しい展開を考える~ 

世界第2位の死因である脳卒中を取り上げる。動脈硬化症による重度狭窄症の場合には、脳卒中、特に脳梗塞のリスクを軽減するために血管再建術を行う。適切な手術を行うためには、術後の脳内の血液循環を予測することが大事である。そこで、講義では、医用画像とシミュレーションを組み合わせ、さらにAI を導入することで、各患者に対応できる予測医療に向けたバイオメカニクスについて講義をする。物理(流体力学)、数学(シミュレーション)、そしてデータサイエンス(機械学習)について解説し、最新の計算バイオメカニクスと医学・医療にける今後の展開について触れる。

現職

東京大学大学院情報学環/生産技術研究所 教授

略歴

東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻 博士課程を修了、博士(工学)。 
1992年より東京大学生産技術研究所の助手として勤務、講師、助教授を経て、2005年教授に昇任。2006年より東京大学情報学環 教授と生産技術研究所 教授を兼務、現在に至る。 

研究

主な研究内容はバイオ・マイクロ流体工学。脳動脈瘤や動脈硬化症などの循環系疾患のための血流シミュレーション統合システムの開発に取り組んでいる。また、2011年より東京大学生産技術研究所 次世代育成オフィスの室長を務め、STEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, and mathematics)教育にも取り組んでいる。 
大学院時代にMITに留学。Engineer’s Degreeを修得。1995年から1996年の一年間、米国のスタンフォード大学へ客員研究員として留学。2017年一般財団法人 機械学会会長を務めた。 

津田 雄一 JAXA「はやぶさ2」プロジェクトマネージャ

講義テーマ

「はやぶさ2」と太陽系探査

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」は,6年間,52億キロメートルの宇宙飛行の末,昨年12月に無事地球に帰ってきました.訪れたのは人類未踏の小惑星リュウグウ.そこで4基のロボットによる地表面探査,2度の着陸/サンプル採取,人工クレーター生成など,数々の成果を挙げました.帰還カプセルの中には,リュウグウのサンプルが5.4gも入っていました.険しく難しいリュウグウの探査を完ぺきにこなしたはやぶさ2の宇宙の旅を振り返りながら,太陽系探査の意義,面白さ,難しさについて紹介します. 

現職

宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所 教授 
はやぶさ2プロジェクト プロジェクトマネージャ 

略歴

1975年広島県生まれ.
1994年桐朋高校卒.
1998年東京大学 工学部 航空宇宙工学科卒. 
2001年東京大学 大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程修了.  
2003年東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 博士課程修了. 
2003年JAXA宇宙科学研究所助教,2015年同准教授,2020年同教授. 
2008-9年 ミシガン大学およびコロラド大学ボルダー校 客員研究員.
2009年 小型ソーラー電力セイル実証機イカロス サブチームリーダー. 
2011年 はやぶさ2プロジェクトチーム プロジェクトエンジニア. 
2015年 はやぶさ2プロジェクト プロジェクトマネージャ. 

研究

「M-Vロケット」の開発,小惑星探査機「はやぶさ」の運用に従事.また,ソーラーセイル宇宙船「イカロス」のサブチームリーダーとして,世界初のソーラーセイル技術の実現へと導いた.小惑星探査機「はやぶさ2」の開発にあたっては,プロジェクトエンジニアとして技術開発を指揮.2015年より「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャ.専門分野は宇宙航行力学、宇宙機システム、太陽系探査. 

上田 正仁 東京大学大学院 理学系研究科 教授

講義テーマ

考える力の鍛え方

現在、世界は日々大きく変化しており、昨日までの常識をそのまま当てはめることができません。これからの時代を生き抜くためには目まぐるしく変化する状況を、自分の頭で分析して判断する考える力が要求されます。考える力は、研究において創造力を発揮するために必須の力ですが、学業においてももちろん重要です。抜群の成績で大学に合格する人が、大学に入ってから伸びるとは限りません。また、社会で頭角を現す人が勉強で苦労したという話はそれほど珍しいことではありません。実は、人生の各段階で優秀層はガラッと入れ替わるのです。それはなぜか。そもそも考える力や創造力は天賦のものなのか。実は、考える力は意識的な努力の積み重ねによって向上させることができます。そして、そのような意識的な努力を続けられるかどうかが、社会で頭角を現す人とそうでない人の差となるのです。講義では、このことについて皆さんと対話を通じて考えてみたいと思います。 

現職

東京大学大学院 理学系研究科(物理学専科)教授 

略歴

1986年 東京大学理学部物理学科卒業 
1988年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程 修了 
1991年 理学博士取得 (東京大学) 
1988年 日本電信電話株式会社基礎研究所 研究員 
1992年 東京大学物性研究所嘱託研究員 (日本電信電話株式会社基礎研究所と兼務)  
1994年 広島大学工学部第二類電子物性大講座助教授 
2000年 東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻教授 
2008年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授 

研究

大学院で最初に行った研究は光子数の連続測定の理論です。その後、メゾスコピック系の物理や多自由度系のトンネリングの研究を行いました。原子気体のボース・アインシュタイン凝縮が実現されてからは冷却原子気体の研究を行いました。また、情報と熱力学とを融合する研究を行いました。最近は、非平衡開放量子系や機械学習の基礎の研究を行っています。

杉山 将  理化学研究所 革新知能統合研究センター長

講義テーマ

人工知能研究のこれまでとこれから

人工知能で用いられる機械学習は,コンピュータに人間のような学習・予測能力をもたせる技術です.本講義では,機械学習によってなぜ予測ができるようになるのか,その原理を解説します.そして,雑音や情報不足に対処するための最新の機械学習技術を紹介します.最後に,将来の人工知能研究が向かうべき方向について,みなさんと議論できればと思います.  

現職

理化学研究所 革新知能統合研究センター センター長/ 
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授 

略歴

1974年大阪生まれ.
2001年東京工業大学博士課程修了.同大学助手,准教授を経て,2014年より東京大学教授.
2016年より理化学研究所革新知能統合研究センターのセンター長を併任.
機械学習の基礎理論とアルゴリズム開発に従事. 

研究

・非定常環境に対する機械学習技術の開発:Sugiyama, M. & Kawanabe, M. Machine Learning in Non-Stationary Environments: Introduction to Covariate Shift Adaptation, MIT Press, 2012. 
・密度比推定に基づく汎用的なデータ解析技術の開発:Sugiyama, M., Suzuki, T., & Kanamori, T. Density Ratio Estimation in Machine Learning, Cambridge University Press, 2012. 
・統計的強化学習技術の開発:Sugiyama, M. Statistical Reinforcement Learning: Modern Machine Learning Approaches, Chapman and Hall/CRC, 2015. 
・弱教師付き学習技術の開発:Sugiyama, M., Bao, H., Ishida, T., Lu, N., Sakai, T., & Niu, G. Machine Learning from Weak Supervision: An Empirical Risk Minimization Approach, MIT Press, 2022. 

冨田 勝   慶應義塾大学先端生命科学研究所 所長

講義テーマ

AIは「心」を持てるか 

「自動翻訳」「自動運転」「顔認証」「囲碁・将棋」「音声認識」など、個別の分野では人間をはるかにしのぐ能力を持ち始めたAIですが、「感性」「感動」「心」「自我」といった人間性の分野では、コンピュータが登場した1950年代から殆ど進歩がありません。私も1980年代に本場アメリカでAI研究に没頭してきましたが、その限界を感じ、1990年代に帰国してから心機一転、生命科学に鞍替えしてバイオ研究に邁進してきました。 37兆個の細胞からなる人間という知的システムは、一つの細胞が分裂を繰り返して半自動的に出来上がったものであり、その設計図であるヒトゲノムが、わずか1ギガバイトの情報量しかないことに、私は衝撃を受けました。 生命がなぜこんなにうまくできているのか、その謎を君たちの世代に解いてほしいと思います。 

現職

慶應義塾大学先端生命科学研究所 所長

略歴

1957年東京生まれ。慶應大学工学部卒業後渡米。Carnegie Mellon University コンピュータ科学部に留学し、指導教官のHerb Simon教授(1978年ノーベル経済学賞)の下、修士課程(1983)と博士課程(1985)修了。CMUの助手、助教授、准教授歴任。レーガン大統領より米国立科学財団大統領奨励賞受賞(1988)。1990年に帰国し、慶應大学湘南藤沢キャンパス(SFC)開設と、日本初のAO入試の導入に関わった。環境情報学部助教授、教授、学部長を歴任。 多分野を専門とし、Ph.D(CMU)、工学博士(京都大学)、医学博士(慶應大学)、政策メディア博士(慶應大学)の4つの博士号を持つ。 

米国National Science Foundation大統領奨励賞(1988)、日本 IBM 科学賞(2002)、科学技術政策担当大臣賞(2004)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2007)、 International Society of Metabolomics功労賞(2009)、大学発ベンチャー表彰特別賞(2014)、Audi Innovation Award(2016)、国際メタボローム学会終身名誉フェロー(2017)、第68回河北文化賞(2019)、第5回バイオインダストリー大賞(2021)など。 

近著に「みんなで考えるAIとバイオテクノロジーの未来社会」(かんき出版)がある。

鈴木 寛   創造性の育成塾 塾長代理

講義テーマ

SDGs・VUCA・AI 時代を生きる君たちへ 

今、世の中は 250 年ぶりの大変革を迎えつつあります。例えば、AI(人 工知能)の台頭により、現在ある多くの仕事が近い将来には無くなって しまうと予測されています。また、これまでの社会で通じてきた様々な 「常識」が通用しないような想定外の危機(災害やパンデミック)が次々 と我々に襲いかかって来ています。このような時代を生き抜くためには どのような能力が必要なのか。「SDGs」や「VUCA」など、これからの時代 を理解するための必須のキーワードとともに、この問いを皆さんと一緒 に考えていきたいと思います。   

現職

東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学政策メディア研究科教授、 社会創発塾塾長、日本サッカー協会参与、OECD 教育政策アドバイザー

略歴

1982年3月 灘高等学校卒業
1986年3月 東京大学法学部卒業 
1986年4月 通商産業省入省(~1999年3月) 
1999年4月 慶應義塾大学環境情報学部助教授(~2001年3月) 
2001年7月 参議院議員(〜2013年7月) 
2003年11月 参議院文教科学委員会理事(~2007年、2009年1月~2009年7月、2011年10 月~2013年)
2004年8月 裁判官訴追委員(~2005年10月) 
2007年9月 参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会委員長(~2008年12 月)
2009年9月 文部科学副大臣(二期)(~2011年9月) 
2014年2月 慶應義塾大学政策・メディア研究科教授(~現在) 
2014年2月 東京大学公共政策大学院教授(~現在) 
2014年10月 文部科学省参与(~2015年2月) 
2015年2月 文部科学大臣補佐官(四期)(~2018年10月) 

研究

政策形成過程、政策デザイン、教育政策、医療政策、情報政策、NPO マネジメ ント、社会起業、情報社会、知価社会、ネットワークコミュニティ、医療・教 育などのソーシャルヒューマンサービスの公共政策、科学・社会・イノベーシ ョン、情報教育などを 1997 年以来、ほぼ継続して教鞭をとり続ける。とりわけ、 「情報社会におけるソーシャル・イノベーション、ソーシャル・プロデュース」 をテーマに、通産省時代の 1995 年に自主ゼミを設立。中央大学総合政策学部、 慶應義塾 SFC、東大駒場キャンパスで続けてきた、いわゆる「すずかんゼミ」 の卒業生はじめ教え子は 1000 名を超え、IT ベンチャー、社会起業家、NPO 活動 家、官僚、メディア、教育、医療、産業界などで活躍中。例えば、被災地復興 ボランティア(人づくり、まちづくり)に関わる有力な活動をしている人材の 多くが、ゼミ出身者かゼミと強い関係をもっている。