鈴木 寛 創造性の育成塾 塾長代理「SDGs・VUCA・AI 時代を生きる君たちへ 」~閉塾式

夏合宿最後は、創造性の育成塾 塾長代理である鈴木先生の講義です。テーマは、「SDGs・VUCA・AI 時代を生きる君たちへ」。先生は、講師の中で唯一文化系の人間だといいます。塾生たちは、真剣に先生の話を聞いていました。

学生時代、物理や脳科学にも興味があったという鈴木先生。高3の1月まで、進路について悩んでいたそうです。そんな中、「研究は研究者のみではできない」と気づき、研究を志す周りの人間をサポートする道に進むことを考え始めたといいます。先生は、中学・高校での経験はとても大事で、その時期に学んだことや、共に学んだ友は一生の宝物になると語りました。

官僚、国会議員、文科省副大臣、その後も様々な立場で日本の研究者をサポートしてきた鈴木先生。ここからは、新型コロナに関連して現在起こっている問題を例に挙げ、塾生たちと議論を深めました。

「あなたは市民病院の院長です。新型コロナの患者が病院に殺到することが予想されます。市内に集中治療室を持った病院は、この病院だけ。しかし、医療資源は限られています。あなたは、どのような判断基準で治療者・入院者を決めますか?」

①治る見込みの高い人 ②予想される余命の長い人 ③社会機能の維持に貢献する人 ④収入の多い人 ⑤ケアの必要がある家族(子供など)を持つ人 ⑥重症度の高い人 ⑦貧しい人 ⑧これまで市に大きく貢献した人 ⑨治癒後、市に貢献する見込みのある人 ⑩抽選 ⑪選挙で政治献金や集票に貢献した人 ⑫その他 …

塾生たちは隣同士で話し合い、自分の考えに近いものに挙手します。すると、⑤ケアの必要がある家族を持つ人 が最も多い結果に。先生は「なかなか無い例だ」と驚かれていました。ちなみに、この講義を参観していた女性サポーターの皆さんは、②余命の長い人 ③社会機能の維持に貢献する人が多い結果になりました。この結果は、年代や職業、環境によっても大きく変わるそうです。このような問題は、公共哲学という学問に属します。

また、先生は「現代の技術を持ってすれば、男性の髪の毛から卵子を、女性の髪の毛から精子を作り、それらを人工授精させることも可能ですが、みなさんはこれらのことは社会として受け入れてよいと思いますか?」とも問いかけました。塾生の意見は、おおよそ半々に分かれ、先生は「比較的近い属性の人たちが集まっているこの集団でも半々に分かれるのだから、この問題は非常に難しいということですね」とおっしゃいました。

最後に、先生は、「様々な意見があるが、どれも正しい。絶対の普遍解はなく、すべてが暫定最適解だ。こうした板挟みの中で苦渋の決断をしている人たちをリスペクトして、君たちのうちの何人かは、この火中の栗を拾うような役割を担う勇気を持ってほしい。」とメッセージを贈りました。

先生は、豊富な人生経験から貴重なお話をしてくださいました。人生の大先輩である鈴木先生の講義に、塾生たちもとても刺激を受けたように見えました。
(14期生 中谷 駿杜)

鈴木先生の講義の後、閉塾式が行われました。修了証書授与の前に、先生は、この創造性の育成塾を創設した 故 有馬朗人 塾長について、次のようにお話しされました。

「この創造性の育成塾は、有馬朗人先生が創設されました。有馬先生は東京大学総長を務められ、また原子核物理で文化勲章を受章され、ノーベル賞の候補にも挙がったこともある、大変すばらしい研究者でした。日本の最高学府である東京大学をすばらしい研究と教育の府にされ、さらに参議院議員をお務めになり、そして初代の文部科学大臣を務められた、本当にスーパーマンのような方です。研究をしても一流、学者としても一流、大学の総長としても超一流、そして政治家としても大活躍され、かつ俳句の名人でもありました。

2020年、大変残念ながら、本当に突然、有馬先生はお亡くなりになりました。本当にお元気だったので、我々残された者は、本当に驚き、残念でした。

そんな有馬先生が、一番力を入れてこられたのが、若い人たちが自由に伸び伸びと、それぞれの好奇心に基づいてサイエンスというものを究める、あるいはそれを応援することに人生をかけていく、その礎を作っていくことでした。その遺志を継ぎ、サポーターの皆さん、全国の理科教員の先生方のおかげで、今回、何とか創造性の育成塾を、こうした形で開催することができました。

私も、これを何とか続けたいという一心で、これだけの人たちに共有していただいて、そして一生懸命に取り組んでいただいて、有馬先生も、天国からとても喜んで、いつものような非常に朗らかな明るいお顔で、『頑張れよ!』と、言ってくださっていると信じております。こうした思いを込め、修了証書を渡したいと思います。」

この後、36名の塾生たち一人ひとりに、修了書が授与されました。

これで、4日間にわたる第16回夏合宿は、すべてのプログラムを終了しました。
生前、有馬先生は、「中学2年生は、いろいろなことを柔軟に吸収できる時期。こうした時期に、様々な一流の研究者に触れることは、今後の人生にとって、とても意味のあることだ」とおっしゃっていました。36名の塾生が、この夏の経験を糧に、のびのびと自分の興味ある分野を究めていってくれることを願います。
(事務局)

動画

鈴木 寛 創造性の育成塾 塾長代理「SDGs・VUCA・AI 時代を生きる君たちへ 」


#タブレット・スマートフォンから再生する場合はこちらから

閉塾式


#タブレット・スマートフォンから再生する場合はこちらから

現職

東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学政策メディア研究科教授、 社会創発塾塾長、日本サッカー協会参与、OECD 教育政策アドバイザー

略歴

1982年3月 灘高等学校卒業
1986年3月 東京大学法学部卒業 
1986年4月 通商産業省入省(~1999年3月) 
1999年4月 慶應義塾大学環境情報学部助教授(~2001年3月) 
2001年7月 参議院議員(〜2013年7月) 
2003年11月 参議院文教科学委員会理事(~2007年、2009年1月~2009年7月、2011年10 月~2013年)
2004年8月 裁判官訴追委員(~2005年10月) 
2007年9月 参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会委員長(~2008年12 月)
2009年9月 文部科学副大臣(二期)(~2011年9月) 
2014年2月 慶應義塾大学政策・メディア研究科教授(~現在) 
2014年2月 東京大学公共政策大学院教授(~現在) 
2014年10月 文部科学省参与(~2015年2月) 
2015年2月 文部科学大臣補佐官(四期)(~2018年10月) 

研究

政策形成過程、政策デザイン、教育政策、医療政策、情報政策、NPO マネジメ ント、社会起業、情報社会、知価社会、ネットワークコミュニティ、医療・教 育などのソーシャルヒューマンサービスの公共政策、科学・社会・イノベーシ ョン、情報教育などを 1997 年以来、ほぼ継続して教鞭をとり続ける。とりわけ、 「情報社会におけるソーシャル・イノベーション、ソーシャル・プロデュース」 をテーマに、通産省時代の 1995 年に自主ゼミを設立。中央大学総合政策学部、 慶應義塾 SFC、東大駒場キャンパスで続けてきた、いわゆる「すずかんゼミ」 の卒業生はじめ教え子は 1000 名を超え、IT ベンチャー、社会起業家、NPO 活動 家、官僚、メディア、教育、医療、産業界などで活躍中。例えば、被災地復興 ボランティア(人づくり、まちづくり)に関わる有力な活動をしている人材の 多くが、ゼミ出身者かゼミと強い関係をもっている。