兼 龍盛 流通経済大学付属柏高等学校 教諭「分子の形と溶解性 抽出の原理」
実験三昧の1日、最後は流通経済大学付属柏高等学校の兼先生による実験です。
物質を形づくっている原子や分子は、普通、目に見えません。顕微鏡などで数千万倍に拡大して、ようやく見えるようになります。今回は、目に見えない原子・分子をどうしたら見ることができるのか?がテーマ。「みんなの頭の中の高性能の顕微鏡=【想像力】を生かして、見てみよう!」ということで、実験開始です。
まずは、兼先生いわく、“タネも仕掛けもある物質”による実験。
出てきたのは、同じ茶色の液体が入った3つの三角フラスコ。そこにカルキ抜き(ハイポ)を入れるとどうなるかを見守ります。
くるくると数回フラスコを振って混ぜると、なんと、茶色が青色に!他のフラスコにカルキ抜きを入れると、オレンジ色と緑色に変わりました!どんなタネや仕掛けがあるのでしょうか? 答えは後半の実験で。
最初の実験では、3種類の物質(塩化銅、ヨウ素、ヨウ素と塩化銅を混ぜた緑色の液体)にヘキサンや水を入れて観察を繰り返します。物質によって異なる反応や、色の変化、界面がどこでできるのかをよく観察することで、ヘキサンと水のどちらにどの物質が溶けて何色になるかを学びました。これの溶け方の違いを利用して物質を分離することを、「抽出」といい、ろ過との違いも活発な議論を通して、学びました。
ここで、最初の実験の解説。
実は、絵具で色付けした色水を、ヨウ素(うがい薬)で茶色にしていたのです。ここにカルキ抜を入れて混ぜることで、ヨウ素を透明にして色水が表れていたのですね!
次の実験では、簡単に手に入る「うがい薬、CCレモン、消毒液」を使い、時間経過で色が戻り、混ぜると色が消える原理をじっくり観察しました。これが外的要因で可逆的な変化が起きる現象「クロミズム」です。
そして、最後の実験。エタノール、プロパノール、ブタノールの分子構造の違いを学びながら、プロパノールのように水に混ざってしまったものを分離するにはどうしたらいいかを考えて実験します。水にプロパノールが溶けた試験管に、水酸化ナトリウムを入れて水を吸着させると界面ができ、プロパノールを分離できました。ここに、透明だとわかりにくいのでフェノールフタレイン溶液を入れ、着色します。すると、上はピンクの溶液、下に透明な溶液が表れました。
しかし、塾生達はここでおかしなことに気が付きます。油は水に浮くはずですが、ピンク色がついた水酸化ナトリウム水溶液が、なぜか上にあります。これはどうしてでしょう…?先生の解説はここまで。みんなでたくさんお話して答えを見つけてみましょう!ということで実験終了です。
今回の実験では、
・実験は仮説を考えて行うもの。考えないのはただの遊びである。
・実験性は再現性を求めるために、何度も何度も行うもの。
・化学は覚えるのではなく、考えるもの。
という、実験においてとても大事な考え方を兼先生から教わりました。
(2期生 加藤 茉里)