津田 雄一 JAXA「はやぶさ2」プロジェクトマネージャ 「『はやぶさ2』と太陽系探査

二時限目は、JAXA「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャをされている津田先生の講義。冒頭、津田先生からの「はやぶさ2を知っている人?」の問いかけには、塾生全員の手が上がりました。

小惑星探査機「はやぶさ」は、世界で初めて小惑星から試料を持ち帰る「サンプルリターン」を成功させました。そして、その後継機である「はやぶさ2」は、2020年、小惑星リュウグウから多くの試料を持ち帰ることに成功しました。リュウグウのような小惑星は大昔の状態をそのままとどめ、地球にはない宇宙の過去を記録している可能性があります。探査機が何年もかけて遠くの惑星の試料を持ち帰ってくることは、地球や宇宙の過去を知る大きな手がかりとなるのです。

津田先生が「はやぶさ2が着陸する時、何が一番難しいと思う?」と聞くと、塾生たちはお互いの意見を交換しながら考えました。

「安全な場所に落とすこと」「設計した位置からズレがないように落とすこと」などなど、様々な意見が出ました。津田先生は、「どの考えも正解!」と言いながら、それぞれの過程の難しかったポイントを、実際に着陸を成功させた先生ならではの視点で詳しく説明してくれました。

様々な苦労を乗り越え、小惑星のかけらを手にした時は、開発にかかった10年間の様々な思いが込みあげてきたそうです。それは「夢がかなった」というより、「小さな興味を育て、自分の好奇心を追い求めていったら、夢のようなことができた、というのが実際のところ」という津田先生。

誰もが知っている「はやぶさ2」の物語の様々な秘話を聞いた塾生たち。講義後には、たくさんの質問があがりました。

(2期生 高山 宗子)

現職

宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所 教授
はやぶさ2プロジェクト プロジェクトマネージャ

略歴 

1975年広島県生まれ.
1994年桐朋高校卒.
1998年東京大学 工学部 航空宇宙工学科卒.
2001年東京大学 大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程修了.
2003年東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 博士課程修了.
2003年JAXA宇宙科学研究所助教,2015年同准教授,2020年同教授.
2008-9年 ミシガン大学およびコロラド大学ボルダー校 客員研究員.
2009年 小型ソーラー電力セイル実証機イカロス サブチームリーダー.
2011年 はやぶさ2プロジェクトチーム プロジェクトエンジニア.
2015年 はやぶさ2プロジェクト プロジェクトマネージャ.

研究

「M-Vロケット」の開発,小惑星探査機「はやぶさ」の運用に従事.また,ソーラーセイル宇宙船「イカロス」のサブチームリーダーとして,世界初のソーラーセイル技術の実現へと導いた.小惑星探査機「はやぶさ2」の開発にあたっては,プロジェクトエンジニアとして技術開発を指揮.2015年より「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャ.専門分野は宇宙航行力学、宇宙機システム、太陽系探査. 

受賞歴・著書等 

・受賞歴 

学術振興会賞,内閣総理大臣顕彰,文部科学大臣表彰,市村学術賞,IAA Laurels for team achievement award等. 

・著作 

「はやぶさ2 最強ミッションの真実」(NHK出版)
「はやぶさ2の宇宙大航海記」(宝島社) 
「はやぶさ2のプロジェクトマネジャーはなぜ「無駄」を大切にしたのか?」(朝日新聞出版)