OB/OGによる科学オリンピックガイダンス

科学オリンピックは、化学・生物・物理・地学・地理・情報・数学があり、世界の高校生が各分野の知識や技能を競う国際大会です。この時間は、国際大会に出場経験のある育成塾OBが登壇し、後輩たちへ体験談を語ります。

まずは、6期生の茂木隆伸さんによる「地学オリンピックへの誘い」。茂木さんは、高校三年生の時に、第9回国際地学オリンピックブラジル大会に出場し、銅メダルを獲得。現在は、東京大学でヒトデの研究をしています。

「実は生物の方が好き」という茂木さん。地学オリンピックに出場に出場するきっかけは、「チラシに恐竜が描いてあったから」とのこと。恐竜に誘われて応募してみたら、中学三年生で一次通過。いつの間にか地学の世界に入っていたそうです。茂木さんは、「なので、違う分野に興味があっても大丈夫です」と言います。茂木さんが出場した第9回地学オリンピックは、2015年にブラジルで行われ、22か国、85人が参加しました。直近の2021年はオンラインで開催され、参加国は34か国、185人まで拡大しています。

地学オリンピックは、主に筆記試験と実技試験が行われます。筆記試験は、火山や地質、気象など地学の様々な分野から出題されます。また、実技試験は、岩石の鑑定や観測などを行います。

地学オリンピックの特長は、ご当地性。その国や場所の特色、その場所でしか起こらなかった現象がそのまま問題になるそうです。
その他、エクスカーションという遠足や、国籍がバラバラのチームで野外調査に出かけたり(ITFI)、気候変動などについて考えるプログラム(ESP)など、試験を受けるだけでなく、各国の参加者と交流ができる機会もたくさんあるとのこと。茂木さんは、「言葉も得意分野も違う人たちと協力でき、大変だけどその分達成感があるイベントです」と言います。

国際地学オリンピックに出場するには、国内予選と本選(日本地学オリンピック)、最終選抜を勝ち抜く必要があります。2020年以降は、新型コロナの影響から国際大会はオンラインで行われているそうですが、ここでも「ホストカントリー」があり、その国にちなんだ問題が出るそうです。ちなみに、次回はイタリア大会。9月から予選の申し込みが始まります。

最終選抜を勝ち抜き、日本代表になった後は、代表研修。合宿研修もあり、鑑定など実技の強化を行うとのこと。「いろんな岩とか石とかが見られて楽しいです。それが楽しそうと思う人は、ぜひ地学オリンピックに来てください。試しに予選だけでも受けてみませんか?」と、体験談を締めくくりました。塾生からは、勉強法や出題傾向と対策などについて質問が相次ぎました。

続いて、13期生の渡邉 雄斗さんによる「情報オリンピックへの誘い」。現在、渋谷幕張高校の3年生で、2021年の第34回国際情報オリンピックで銀メダルを獲得。今年も、8月7日から日本代表としてインドネシア大会に出場します。

趣味は、競技プログラミングという渡邉さん。情報オリンピックは、まさにこの競技プログラミングを世界中の中高生と競う大会です。4年前に育成塾でOBOGの体験談を聞き、「なにかオリンピックに挑戦してみよう」と、中学3年生で地学オリンピックと化学オリンピックに挑戦。その後、高校1年生で友達に誘われたことをきっかけに情報オリンピックに初参加し、日本代表に選出されました。

「みなさん、情報科学という言葉は聞いたことありますか?情報オリンピックが関係しているのは、その中の”アルゴリズム”という分野です」と渡邉さん。まずは、アルゴリズムの説明から。

情報オリンピックの問題は、例えばこんな感じ。

・おにぎりとサンドイッチがたくさんあります。
・それぞれ種類がたくさんあり、種類ごとに値段が決まっています。
・値段は1円~10万円。
・おにぎりとサンドイッチを一種類ずつ買いたいです。
「合計が1円になる組み合わせは何通り?」
「合計が2円になる組み合わせは何通り?」

「合計が20万円になる組み合わせは何通り?」 に全て答えてください。

全てを試そうと思っても、10万×10万=100億回の計算が必要で、途方もない時間がかかります。情報オリンピックでは、計算の実行時間に制限があり、2秒程度で計算を終わらせないと正解にならないため、もっと効率的に計算する必要があります。こうした問題を効率的に早く解決する方法、それがアルゴリズムです。(ちなみに、上記の問題を解くアルゴリズムはとても難しいため説明は割愛。興味のある人は「高速フーリエ変換」を調べてくださいとのこと…)

ここで、簡単なアルゴリズムを紹介するために渡邉さんが用意したのが「最短経路問題」。
図には、複数の丸とそれらをつなぐ線、線の横に数字が書いてあります。丸が都市、線が道路、数字が道路の長さを表しています。都市Sから都市Gまでの最短経路の距離はどれくらいでしょうか、という問題。これは、ダイクストラ法というアルゴリズムを使えば解けるそうで、カーナビなどに活用されています。

情報オリンピックは、一人一台パソコンを使い、与えられた問題に対して「どんな値が与えられても正しい答えを返すプログラムを書く」というのが基本。採点は機械が行い、競技時間内に何度でも提出できるのが特徴です。

競技プログラミングには、アルゴリズムに加え数学やパズルの要素もあり、論理パズルが好きな人にもおすすめとのこと。渡邉さんは、「情報オリンピックは筆記ではなくプログラミング競技なので、やっていてとても楽しい。ハマってどんどんやると強くなれる」と話しました。

ここでもたくさんの質問が出ました。16期生から科学オリンピックの日本代表が生まれる日も近いかもしれません。

(事務局)

動画

この動画の公開は終了しました。(23.8.28)

6期生 茂木隆伸さん「地学オリンピックへの誘い」


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13期生渡邉雄斗さん「情報オリンピックへの誘い」


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