「私がここにいることはわかりますか。」
そんな、一見あたり前のような質問から西森先生の講義は始まりました。
「物がそこにあるということを、見て分かる」というのは、その物に当たって反射した光を私たちの目で受け取ることで認識しています。
「では、光とは一体何なのであろうか。」そうした問いかけに、塾生は「光子」「粒子」「波」と各々答えていきました。
昨日の講義でも取り扱われた「粒」と「波」という光の性質ですが、塾生たちにとって理解するのは少し難しそう。そこで、先生は分かりやすい図や動画などで丁寧に説明。さらには、実際にレーザーポインターの光をスリットに当てて干渉縞を観察することに。波の性質である干渉縞が出現すると、塾生からはおおっと歓声が上がりました。
光はスリットを波として通り抜け、観測するときには粒子として確率が高いところに現れる。量子力学において、波とは「確率の波」なのだということに少し納得がいった塾生もいたようです。
先生は、電子も「波」としての性質と「粒」としての性質を持っているということを紹介し、すべての物は「波」と「粒」の二重性を持つということ、特にミクロの世界でその性質が現れてくるということを説明。そして、電気が流れる非常に小さな超伝導状態のリングであっても、電流の向きを観測すると50%ずつの確率で右回りと左回りになり、観測するまでは2方向が共存していて、そのような素子をコンピュータに組み込むことで量子コンピュータはできているのだと、本題の量子力学を使った計算の話に繋げていきます。
従来のコンピュータでは、1ビットに0か1のどちらかの情報しか記録できませんが、量子コンピュータの1ビットには0と1を共存させることができます。さらに、ビット数を増やしていくことであらゆる数字を同時に表すことができるようになります。そこから量子アニ―リングを行うことで、すべての可能性の中から一番良いものを選び出す問題(最適化問題)を簡単に解くことができるといいます。塾生は未知のコンピュータの説明に圧倒されていました。
また、量子コンピュータの強みは情報処理の能力だけではないようです。稼動コストが、従来のスーパーコンピュータに比べて大幅に削減できる処理もあり、従来機の抱える持続可能性の問題も解決できると西森先生。
そんな量子コンピュータですが、既に多くの企業や団体で利用、研究されています。渋滞の解消や、人それぞれに応じた避難経路図の作成、医療における診断の補助等、これからの発展に期待が膨らみます。塾生が最先端の情報技術を知る貴重な機会となりました。
(6期生 野々宮悠太)