講義

先端材料が拓く地球の未来 -社会の持続的成長に貢献する東レの先端材料-(藤川 淳一 東レ 顧問)

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※講義の様子を、映像でご覧いただけます。

「新しい価値の創造を通じて社会に貢献する」という、東レの企業理念。藤川先生の講義は、東レの企業紹介ビデオの放映から始まりました。
1964年の東京オリンピックの頃まで、日本の企業は技術を海外から買い、その技術をもとに製品を製造していました。しかしその後、日本の企業は成長を遂げ、海外の企業にとってライバルになり、日本の企業自体が研究を行なって技術を生み出しています。「日本の企業は海外のまねっこをしているだけだと主張する人がいるが、それは誤っている。」と、藤川先生ははっきりと言います。

東レは、1926年にレーヨンを生産する企業として創業しました。現在は、先端材料で世界一を目指す企業になっています。また、東レの研究・技術開発費は年を経るごとに上昇しており、このように、日本企業は技術開発に重きを置いているとのこと。「企業の技術には『特許』、すなわち独占的に技術を利用することを許可される仕組みがあるので、他の企業よりに先んじて開発しなければならない。」と、技術開発の重要性を説きます。

次に、東レの代表的な製品である、炭素繊維と海水淡水化膜の紹介。炭素繊維の紹介スライドを示し、塾生たちに炭素繊維を手に取らせます。「鉄の4分の1の軽さなのに、10倍の強さがある」と、材料の説明を進めていきます。ただ、まだ普及はしておらず、いまだに自動車には主に鉄が使われていることからも、今はまだ「鉄の時代」と言えるそうです。普及しない理由は、炭素繊維が高価だから。炭素繊維の製造段階で材料のニトリルを炉に入れるのですが、ニトリルが高価であることと、炉が大規模であることが炭素繊維の高価さにつながっているそうです。
このように価格がネックになっている炭素繊維ですが、現在、ボーイング社の航空機B787の機体の主翼に使われており、今後の普及が期待されています。

続いて、海水淡水化膜の紹介に移ります。特定の分子だけが膜を透過する様子をスライドの模式図で示した後、実際の膜を用いて簡単な演示実験が行われました。
先生の前に置かれたコップの中に入った青い水を、この膜に通すと…無色になりました。同じ原理で、海水を淡水にすることができ、世界的な問題である水不足の解消につながります。これまで、海水から淡水を作るには、海水を加熱して固体を析出させていました。しかし、膜を利用するこの方法によって、エネルギー消費が5分の1にできたそうです。また、膜の穴の大きさによって、イオン・ウイルス・バクテリアなど、水から除去するものを変えることができます。この製品はグローバルに展開し、世界の4.2億人の生活用水を生み出しているそうです。

最後に、先生から「夢を持ち続けることが大切」というメッセージが送られました。同時に、「みんなが買ってくれるものを、利益が出るように、安く大量に生産できないといけない」という、民間企業として必要な姿勢を教えてくださいました。

質疑応答の時間には、たくさんの質問が出ました。「前日の林文部科学大臣の講義において、給料があまり変わらないために博士課程に進まない人がいると聞いたが、東レには博士課程修了者に優遇はあるのか」といった、以前の講義に絡めた質問も出されました。この質問に対し、藤川先生は、「会社では、業績を上げられるかどうかが重要。必ずしも博士課程修了者の業績が良いわけではない。大学の博士課程の教育が、あまり企業向けではないのではと思う」という見解を示されました。
企業における研究の話、塾生には新鮮だったようです。

(5期生 矢吹 凌一)

講義の様子を、映像でご覧いただけます。

映像の公開は終了しました。(23.8.28)

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