実験

未来を変える燃料電池(小林 輝明 荒川区立第七峡田小学校 校長)

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「『燃料電池』という言葉を聞いたことがある人はいますか?」という問いかけから始まった、小林先生の実験。塾生のほぼ全員が手を挙げます。
小林先生が燃料電池の教材開発をはじめた約20年前には、「それは未来のエネルギー」という副題がついていましたが、現在では「それは日本が世界を変えるエネルギー」だと、先生自身は考えているそうです。

はじめに、「スペースシャトルの電源として利用されている」「中学2年の理科で扱う、水の電気分解の逆の反応」など燃料電池の基本的な情報を紹介。そして、先生は水素ボンベと酸素ボンベを持ち、「これらのガスから電気を作ります」と、話します。理科の授業でまだ習っていない塾生のために、水の電気分解の映像を見せた後、実験開始です。

まずは装置を組み立てます。電極となるニッケルの金網やゴム栓、またガスを注入する注射器を、先生の指示に従って組み立てていきます。電解液となる飽和重曹水溶液をタッパーに入れたあとで、先生からお題が出されました。「もう一本の注射器で、タッパーに差した注射器の中を、電解液で満たしてください。」塾生たちは、各自で方法を考えながら作業を進めます。

電解液で満たすことができたら、そこに水素と酸素を入れていきます。これらを入れたら、メロディーテスターを電極につなぎます。すると…かろうじて音が鳴りました。
「今度は2つ直列につないでみよう!」先生の呼びかけで、2つの班が作成した電池を合わせて、メロディーテスターの鳴り方がどうなるかを確認します。すると、電池が1つのときよりも、音楽がはっきりと聞こえるようになりました。4つ、8つ、と、つなぐ電池がどんどん増え、メロディーが鳴るたびに塾生から歓声が上がりました。「皆、鳴ってよかったです」と、先生もひと安心の表情を浮かべます。

続いて、燃料電池の今後について。
先生は、「燃料電池は、まだ研究発展の段階です」とし、未来への可能性について話していきます。自分の家で発電する、お湯をつくる。荒川区の水素ステーションの写真も示されました。また、2018年7月26日の産経新聞の記事を引用し、東京オリンピックで燃料電池のバスを走らせる話もある、ということを塾生に紹介しました。

最後に、燃料電池に関する「誤解」の話が出ました。塾生たちに、醤油さしに2つのクリップが刺されたものが配られました。この中に電解液を満たして、乾電池で電気分解を起こし、直後にメロディーテスターをつなぐと、音が出ます。「これが燃料電池の実験だ、と主張する先生方が多くて困った」と先生は語ります。「燃料電池は、そもそも発電するもの。」電気分解の直後にメロディーテスターを鳴らす実験は、乾電池の電力を変換しているだけであり、燃料電池の実験ではないのです。

「燃料電池は、水の電気分解の逆転の発想の原理に基づいている。逆転の発想が未来を変える。」
8年前に塾生だった私が小林先生から教わったメッセージは、13期の塾生たちにも伝えられ、この時間は終了しました。

(5期生・矢吹凌一)

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