講義

医学と科学-さまざまな考え方を理解する-(永井 良三 自治医科大 学長)     

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「さまざまな考え方を理解する」ことは、科学を学ぶ塾生にとって非常に大切なテーマです。
偉大な歴史的人物や哲学者の話を交えながら、科学とは何か、そして自然を理解するためにはどんな考え方が大切なのか、永井先生はひとつひとつ丁寧に塾生に話していきます。

先生は医学に限らず、科学にまつわる様々なトピックを紹介。
「物事の順序、原理の理解をしないと本当に理解することはできない」と唱えたデカルト、「仮説が研究の開始点になる。間違っていたら訂正していく」と主張したパースなど、偉大な哲学者の考え方を紹介し、「彼らの考え方は今のみなさんも使えるもの。さまざまな考え方をふまえて勉強していくことが大切」と永井先生は言います。

次に、先生が塾生に紹介したのは「人間の感覚がいかに不正確であるか」という話題。
錯視を用いたイラストを見せると、塾生は真剣なまなざしでそのイラストを見つめます。イラストに含まれる余計な情報に惑わされた塾生たちは、しばらくたつと自分自身の錯覚に気づき、思わず声が上がりました。「観察するだけでは間違えることがよくあるので、事実だけを鵜呑みにしないことは大切なことです」と永井先生は言います。

その後、現代の医療で使用されている技術をはじめ、光の波長の話や宇宙の無重力での話、そしてスポーツ科学まで幅広い事例を用いて、塾生に科学の不思議さと面白さを伝えていきます。
講演の最後には、臨床医学で求められる考え方を塾生に伝え、「成績が良いからといって必ずしも医学で成功できるわけではない」と強調。
「特に、医学分野には科学とは異なる部分もあり、理屈だけでなく事実としっかり向き合うことも必要」だと、医学に興味のある塾生にメッセージを送りました。

講義後の質疑応答では、なかなか質問が出ません。
その様子を見た永井先生は、「自分の理解が正しいかどうか、それを確認できるチャンスが質疑応答の時間です」とアドバイス。
さらに、カントの言葉を用いて「批判的に考えることは研究する上で重要」と念を押すと、直後には複数の塾生の手が挙がりました。今後の塾生の積極的な姿勢に期待します。

(5期生 土山 絢子)

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