講義

物理オリンピックでの体験を振り返って(東川 翔 東京大学大学院 博士課程)

  • LINEで送る
※講義の様子を、映像でご覧いただけます。

今回の講師は、第40回物理オリンピックで金メダルを獲得した東川先生です。先生は、選手として参加した後も大会運営に携わっており、出場選手と運営役員の両方の立場からお話をしてくださいます。

物理オリンピックには3段階の選抜があります。最初の「第1チャレンジ」は筆記試験と実験レポートがあり、特に後者で差がつきます。実験では、結果そのものよりも結果に至るまでの過程が重視され、考える力が鍛えられます。「第2チャレンジ」では、高校物理の範囲を超える問題が出題され、知識よりも思考力が試されます。また、試験時間が5時間と長く、1つの問題についてじっくりと考える“知的体力”も重要です。その後、通信添削や合宿形式の研修を経て、「チャレンジ・ファイナル」で選抜に通過すると日本代表に選ばれます。

国際大会の試験では、ノーベル賞の対象となった研究などもテーマになります。「実験試験の1問目はうまくいかず、焦りました」と先生。思考力や知的体力に加え、マインドコントロールも重要だそうです。ちなみに、国際大会では観光や文化交流の時間も多くあります。「国際物理オリンピックのWebページ(http://www.jpho.jp/)を見てイメージを膨らませ、モチベーションを高めてください」とアドバイスします。

創造性の育成塾と同じく、オリンピックで出会った人たちとの交流は大会後も続きます。
先生が大学に入学した時に、第2チャレンジで知り合った友人に出会い、その後大学院でも同期となったそうです。さらに同世代の人だけでなく、先輩から勉強や進路などについてアドバイスを受けたほか、運営役員として後輩の指導を行ったことも勉強になったとのことです。

「参加前は、みんな“そんなの無理だよ”と言いますが、メダル獲得後は“君ならできると思っていた”と言われました。周囲の人の言うことは変わりますので、自分のやりたいことを貫く気持ちを大切にしてください。数学オリンピックの予選で惨敗したこともありましたが、様々なことにチャレンジし、自分に向いていると思ったことに注力すると良いです」と、塾生たちを激励します。
最後に、先生は「素晴らしいものって何ですか?」と問いかけます。これに対する先生の答えは、「何かしらの思いが感じられるもの、例えば努力の成果が表れるオリンピックや、優れた本です。“素晴らしいもの”に触れれば人格が良くなり、考え方の幅が広がります。若いうちに、自分が良いと思うものや、良いと勧められたものにたくさん触れてください」とのメッセージを送りました。

塾生からは、大学受験との両立や物理の勉強法について多くの質問が挙がりました。
「東京大学の入学試験では、数学の試験は2時間半です。これは5時間ある物理オリンピックよりもはるかに簡単です。1つ何かを極めると、思考力や知的体力が高まり、他の科目もできるようになります」とのこと。塾生たちは、貴重な経験談を真剣にノートに記録していました。

(4期生 高倉隼人)

講義の様子を、映像でご覧いただけます。

映像の公開は終了しました。(23.8.28)

スマートフォンなどモバイルデバイスはこちら



  • LINEで送る