「『カタチ』から探る動物の暮らし」川島 紀子 文京区立第六中学校

突然の雷雨というトラブルに見舞われましたが、無事午後の会場に到着。
3時限目は、川島紀子先生による実験です。塾生たちの机の上には、何かが布に隠された状態で置かれています。
「科学系の博物館が大好きなんです!」と話す川島先生。おすすめの博物館の紹介から講義が始まりました。

ウマ(サラブレット)の骨格標本を手に説明する川島先生

今回塾生たちが挑戦するのは、学術標本の観察と考察です。
「これは、落ちていたシカです!」と先生が頭骨標本を取り出すと、驚きの声が上がりました。標本を作るためには死骸を長時間煮込んだりする必要があり、難しい上に大変な作業なのだそう。
「では、机の上の布を取ってください」と川島先生。そこには大量の骨格標本が!これらは、麻布大学いのちの博物館と千葉市動物公園から創造性の育成塾のために貸出のご提供を頂いた、貴重な骨格標本です。主役の登場に、塾生たちもわくわくしている様子。

多方面からお借りした標本が机を埋め尽くす

次に先生が取り上げたのが、「生命誌絵巻」。
多種多様な生き物たちも、もとはたった一つの生物だったのだと説明がありました。さらに、「骨格には生き様が詰まってるんだ」とも。例えばライオンとシマウマでは、歯のつくりが全く違います。肉食と植物食という食性の違いを、尖った歯と平らな歯という特徴から読み取れることを学びました。

そして、川島先生は動物園で撮影したヤギの食事シーンの動画を流しました。顎を横にスライドさせて噛み、飲み込んだ後に口の中に戻して、再び咀嚼する“反芻”をするコミカルな姿に、塾生たちからは歓声と笑い声が起こります。
「では、同じ草食動物であるゾウの食べ方は分かる?」と川島先生。正解は、「顎を前に動かすようにしてすり潰す」。これも、ゾウの歯に横向きの溝が入っていることから予想できるのだといいます。

骨格標本の見方が分かったところで、いよいよメインとなる観察・考察へ。
いろいろな標本を見て、お気に入りの動物を見つけるよう促されました。普段はなかなか触れない大量の標本を手に取れる機会に、塾生たちは大盛り上がり。

推し骨格を選ぶ塾生たち

その後、塾生たちは、肉食動物、植物食動物、霊長類など“推し生物”ごとにグループに分かれて、考察課題に取り組みました。
「草食動物は広範囲が見える位置に目があることにより、敵から逃げられるのでは」「齧歯目の前歯は肉食動物っぽいが奥歯は草食動物っぽい」などの鋭い意見が続々と。”謎の標本X“の同定に挑戦したグループは、日本産アライグマとの比較をすることで「外国にしか生息していないアライグマの亜種なのでは?」との仮説を立てていました。それぞれの意見に先生からの補足と解説がつき、塾生たちのさらに深い理解に繋がったようでした。

「今日は標本のカタチから、動物の世界の多様性と共通性を見てきました。生き物の面白さに気づいてくれたら嬉しいです!」とのメッセージと共に、本日3時限目は終了。大変貴重で刺激的な体験ができ、大充実の90分間だったことと思います。

(15期生 日吉雪乃)