「身近には体験できない状態変化」小原 洋平 東京都立小石川中等教育学校

4日目の最後、4時限目は小原洋平先生による「身近には体験できない状態変化」です。「どんどん実験をやっていきましょう!」の言葉に、塾生たちから歓声が上がります。

まず塾生たちには、黒いシートが配られました。指で触ると色が変わります。これはサーモシートと呼ばれる液晶の1種で、温度によって色が変わる仕組みです。「ところで、液晶って何ですか?」という先生の問いかけに塾生たちは首をかしげます。「実は、物質の三態(固体・液体・気体)以外にも物質の状態は存在します。液晶は、固体と液体の“間”なんです。」液晶とは、分子の位置に規則性はないが、分子の方向に規則性をもつ状態のこと。塾生たちは、まだピンと来ていません。

そこで、液晶についての実験です。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)と呼ばれる増粘剤と、水を適量しっかり混ぜ合わせ、液晶を作ります。「水の量がポイント。しっかり混ぜてください。」の声に塾生たちは黙々と混ぜ合わせます。

今はただ白い状態ですが、時間がたつと少しずつ色が変わってきます。数年前に作った先生の液晶を見ると、オーロラのようなきれいな色に変わっていました。(完全に液晶状態になるまで2週間はかかるため、塾生たちはお土産として持ち帰ることになりそうです)

「なぜ液晶はこのような色に見えるのでしょうか。」これには、液晶の構造と光の性質が関係しています。
液晶はたくさんの層からなる多層構造です。そして光には干渉という性質があり、物質に膜があるとき、光は通常より多く反射して光を放ちます。これらの色が同じ場合、強め合って色がはっきり表れるそうです。これがたくさんの層で発生するため、様々な色が出現するのです(多層膜干渉)。

先生が数年前に作った液晶

続いて、水の状態変化についての実験。
「0℃になる瞬間を見たことありますか。」先生の問いかけの後、塾生たちに-5℃まで冷やされたペットボトル飲料を手渡されました。そして、激しく振って衝撃を与えた途端、氷に早変わり。

激しく振るとペットボトルの中に氷ができた

「水の凝固点は0℃のはずなのに、なぜ凍らなかったのか」これを確かめるために、食塩と氷を混ぜた寒剤の実験を行います。細いチューブを蒸留水で満たし、寒剤に入れて水温を記録します。「あ!温度が0℃を下回った!」ひとりがそう言うと、隣から「あれ?-10℃まで行ったのに突然温度が0℃まで上がった!」と聞こえてきます。

グループで協力し10秒ごとに水温の変化を記録した

小原先生は、「液体は固体になるときに一旦氷点下まで温度が下がる期間があり、これを過冷却と言います。雪が降ると、よく道端に撒かれている塩化カルシウム。これは過冷却を利用して雪を融解しているのです。」と解説しました。

「身の回りって目に見えるものがすべてじゃない。見えてないことに本質があったりするんですよ。あれかこれか、じゃなくて、あれもこれもやってほしい。」先生の言葉に目を輝かせる塾生たちの姿には、希望が満ち溢れていました。

(15期生 田村 晴)