「光量子科学の最前線への招待」五神 真 創造性の育成塾 塾長・理化学研究所 理事長
続いて、研究に興味を持ったきっかけとして、学生時代にアマチュア無線に興味があり、山に行ってはアンテナを立てて受信していたという経験を紹介されました。
「研究は面白い。世界では面白い研究がたくさん行われているので、それに携わる人材がこの中から出てほしい。」という期待のこもったメッセージでイントロの部分は終了。塾生たちは、世界の第一線で活躍されている塾長の話に、釘付けに早くもなっていました。
そして講義は本題に入り、「地球規模の課題とデジタル空間」「総長の仕事」「光の二重性」の3つのテーマに沿って話が進みます。
1つ目の「地球規模の課題とデジタル空間」は、地球規模で温暖化が進行しているという内容から始まりました。
「これは人間が引き起こしたことであり、我々人間が解決しなければいけない。そのため、新しいアイデアと行動変容が求められる。」と話し、その解決策の一例として、「リアルタイムデータの共有」を挙げました。人々の移動をリアルタイムに可視化することで、お互いの行動をデータとして把握し、それを参考に各人が自由に判断して行動する。この積み重ねにより、地球の環境問題は少しでも良い方向に向かうというものです。
2つ目は「私の歩んできた道」と題して、総長の仕事の紹介をされました。
2015年からの6年間、東京大学の総長を務められた五神先生。東京大学の入学式での式辞はもちろん、東京六大学の始球式や、本の執筆もされたそうです。想像よりも仕事内容が多岐に渡っていることに驚きました。
お話の中で、「知のプロフェッショナルになるために必要なこと」を挙げ、歩きながら考えていたら電信柱に激突したなど、「忍耐強く考え続ける」ことを実践したエピソードや、日本という国が特殊な環境にあることを念頭に置いた上で、自己の相対化が必要であることなど、塾生の心に響く内容が数多くありました。
最後の3つ目は、光についてのお話でした。ヘルツの実験の説明になると、塾生たちは「実験」のワードに惹かれたのか、食い入るようにスライドを見て実験の状況を理解しようとしていました。また、その後のヤングの干渉実験や光量子仮説、光電効果の説明は、高校物理で習うような難解な内容でしたが、塾生たちがペンを動かしながらなんとか数式を理解しようとしていたのが印象的でした。
そして講義は最終盤へ。
「この変化の時代に生まれた皆さんが、少し羨ましいです。自分で変化を作り出していく中心人物になってください」というメッセージと共に、先生が懇意にされている将棋の羽生永世七冠の「新しい可能性と向かい合い、面白いと思って挑戦し続ける」という言葉を紹介しました。そして最後に「好奇心を大切に!」という言葉で講義を締め括られました。この講義に参加している塾生たちも、今持っている科学への好奇心を大切にして、新たなことを知る喜び・発見の喜びを噛み締めて欲しいです。
質疑応答では、「可視光線の色が波長によって変わるが、なぜ一定の変化率ではなく色の境界では急激に色が変わるのか」や「誘導放出ではなぜ光をコピーすることができるのか」といった質問に丁寧に答えていただきました。そして質問していない塾生も、質疑応答を理解しようと必死に聞き入っていました。ぜひこの5日間、少しでも多くのことを吸収して欲しいです!
(10期生・若杉聡真)
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