【矢吹 凌一・5期塾生】
創造性の育成塾第5回OBOG会が,2019年3月28日(木)に東京都内で行われた。
今回は第1部A・個別相談会,第1部B・キャンパスツアー,第2部・交流会の構成で,2期生から13期生まで約80名が参加した。
【第1部A・個別相談会】
今回のOBOG会から新たに導入された個別相談会では,主に高校生以下の後輩塾生が大学生以上の先輩塾生に対して受験勉強や進路選択,そして科学オリンピックに関する質問や悩みを相談した。当日は7名の先輩塾生と20名を超える後輩塾生が集まり,今後の進路選択に関する具体的な話をしたり,受験勉強の成功・失敗体験を共有したりして大いに盛り上がった。年代を超えて塾生たちが交流できる新しい場として今後も継続できたらと思う。(報告:5期塾生・土山絢子)
【第1部B・キャンパスツアー】
今年のキャンパスツアーはガイド2人に対して参加者40人近くと非常に多くの塾生たちが参加した。若い12,13期が非常に多かった。
東大のシンボルともいえる赤門(旧加賀藩御守殿門)からスタートし,まず入ったのは東京大学総合博物館。400万点に及ぶ標本やサンプルが所狭しと並べられ,参加者たちはあちこちを熱心に見学。ちょうど開催されていた家畜展に並べられた様々な家畜や哺乳動物の頭骨の前では皆感嘆の声を上げ,興奮を隠しきれない様子。観覧時間が15分しか用意できなかったため,皆時間ギリギリまで夢中で見て回った。
博物館を出た後は2グループに分かれ,総合図書館,三四郎池(正式名称:育徳園心字池)など東大内の名所をぐるりと見学。最後に銀杏並木を通って安田講堂(東京大学大講堂)に集まった。安田講堂前では全体の集合写真を撮り,友達同士でも思い思いに記念写真を撮っていた。
解散後は多くの塾生達が安田講堂前の広場の地下にある中央食堂で昼食をとり,東大生の雰囲気を満喫していた。
東大,ひいては大学の雰囲気を実感してくれたなら僕らとしては幸いである。(報告:5期塾生・宮園健太郎)
【第2部・交流会】
はじめに,アイスブレイクの企画として,「自己紹介」を行なった。
参加した塾生たちは10のグループに分かれ,グループ内で自己紹介をした。次に,各グループから1人ずつが,全体に向けて自己紹介した。
自己紹介の後,全体発表に移った。今回は,11期塾生・大野浩輝さん,5期塾生・土山絢子さん,5期塾生・山田優樹さんの3人が発表した。当日会場に来られない塾生向けに,この全体発表はオンラインで中継された。(中継:6期塾生・野々宮悠太)
11期生の大野浩輝さんは,化学グランプリ2018で金賞と筑波大学長賞を受賞した。また,第11回日本地学オリンピック本選では,金賞と茨城県知事賞を受賞し,総合成績一位を獲得した。来たる2019年8月には,国際地学オリンピック2019韓国大会にて日本代表としてメダルを目指すそうである。
今回のOBOG会の全体発表会では,予選突破後の選考の過程を,自身の経験を交えながら説明した。
地学オリンピックでは三年間の挑戦により全賞受賞している(女性総合成績1位の賞を除く)。二次本選では,金賞の中でも,今年は,総合成績が一番であったのが嬉しかったと述べた。日本代表選考により,韓国大会への出場が決まったが,韓国大会では,4日目と5日目に試験に挑む。その後の国際交流も楽しみにしているそうだ。
また,化学オリンピックは,金賞・筑波大学長賞を受賞。八十名前後しか選ばれない予選は,倍率が最も高く,問題は教科書以外の内容も勿論出題される。また,代表選抜では,専門書からの出題もあるようだ。
厳しい選抜の話の合間に出てくる化学オリンピックグッズ等身近な話題に会場もホッと和んだ。
日頃の勉学にとどまらず自ら挑戦する姿勢は育成塾の後輩達にも刺激を与えていた。
来年もまた化学オリンピックに挑戦し,代表への切符を手にしたいと力強く話してくれた。
また,伊計島で開催された数理の翼への参加も,活発な議論を交えることができとても楽しかったと述べていた。(報告:3期塾生・奥村有紗)
2人目の発表者は,5期生の土山絢子さんだった。4月から大学院に進む土山さんは,SIYSS 2018(Stockholm International Youth Science Seminar)での経験を語った。前半は,書類審査,二次面接,事前研修会の流れを説明し,後半は,現地での研究発表の様子や,ノーベル賞に関連したイベントの様子を話した。研究発表では,深発地震のメカニズムに関する研究を,地震現象そのものをほとんど体験したことのないスウェーデンの人に伝えるのに苦労したことなどを話した。また,ノーベル賞授賞式の荘厳な雰囲気や,ラフなアフターパーティなどでの体験を,写真をたくさん交えて後輩たちにもわかりやすく話した。最後には塾生に対して,「専門性を追求しつつ,他分野への興味も忘れずに」というメッセージを伝えた。発表後の質問タイムでも,後輩たちからSIYSS参加メンバーに関する質問などが飛び出し,丁寧に答えていた。(報告:8期塾生・太田一毅)
最後の発表者は5期の山田優樹さんだった。理科好きな生徒が多く集まる中,文系に進んだ彼から見た日本の科学技術の抱える課題を文系学問の紹介や簡単なディスカッションも交えながら話した。
AI研究でトップを行く中国やアメリカに対して日本が遅れをとる理由は何か。まず山田さんは参加者に問いかけ,大学生,高校生,中学生から様々な答えが返ってきた。大学生や高校生だけでなく,中学生からも興味深い回答が寄せられた。これに加えて山田さんは文系的な見方を披露。多額の費用を必要とするAI分野に対して,巨額の費用をかけるリスクをとれる巨大企業が少ないこと,中国やアメリカに比べて投資家から資金が得づらいこと,ディープラーニングにおいて不可欠な個人情報に関して厳しい法制度であること,中国やアメリカは軍の研究として資金を多くかけていることなど,AI開発の競争を取り巻く社会的な環境について語った。
最後に山田さんは,文系的な知識が理系での研究の強みになりうること,進路を選ぶとき本当に自分の好きなことを選び,それが世の中にどのようなインパクトを与えられるものなのかを考えるようにと参加者にアドバイスをして締めくくった。(報告:5期塾生・宮園健太郎)
全体発表終了後,自由歓談の時間となった。久々に会う同期と近況報告をしあったり,異なる期でも同じ分野に興味を持つ塾生同士が集って語り合ったりしていた。
<参加者アンケートより>
・進路についてあまり知らない私にも,大学や今後の学習について詳しく教えていただいて,とてもありがたかったです。
・東大のキャンパスツアーは初めてだったが,わかりやすかった。
・様々な考え方を知ることができ,面白かったです。
・毎年違った人から講義を聴けるうえ,ふれあいの場にもなるのでとてもいい企画だと思います。来年も楽しみです。
(記事内写真撮影:6期塾生・小澤咲乃)
本OBOG会にご協力くださった方々に感謝申し上げます。