私の将来の夢は、化学の面から医療を支えることです。
今まで、ただ漠然とそう思っていたのですが、今回の夏合宿を通して、より具体的な将来像を描くことができるようになりました。
たくさんの素晴らしい授業の中で、私が一番印象に残っているのは、根岸英一先生のご講義です。私は、先生が発見された根岸カップリングの構造の中で、特に、触媒として用いられるpalladiumに興味を持ちました。炭素-炭素結合実現の王手となったのが、そのクロスカップリングに、palladiumが触媒として使用できる、ということだったのがその理由です。私は、金属であるpalladiumをどのように触媒として利用するのか、とても不思議に思いました。金属は、融点・沸点がとても高いので、液体や気体として利用するとは考えにくいし、固体として利用する、と言うのもイメージできませんでした。どうしても知りたかったので、根岸先生に直接お聞きしたら、”溶媒に溶かして使うか、あるいは固体のまま使用する”というお答えでした。また、根岸先生の授業で、比較的私達の身近にある、TiやAuなどのD-block遷移金属が触媒として大変有効だとのお話もあり、触媒というものの面白さに気づきました。このような経験を通して、私は、化学における魔法の薬である触媒技術を応用して、新しい治療法を発見したいと考えるようになりました。
具体的には、悪性化した細胞に、ある触媒を加えて正常な細胞に戻す、という研究をしてみたいな、と考えています。また、このグラフでわかるように、日本人の死因№1は癌なので、そのような研究が実れば、癌細胞を正常な細胞に戻す、という新たな治療法への応用にもつながると思います。
また、私は、医療を志そうと決めたときから、人間は、科学の力を使って、どこまで進んでよいのか、ということについて、悩み、考えてきましたが、今回の合宿での鈴木先生の授業を通して、ある一定の答えを得ることができました。
その問いに対する人々の考えは多様であり、また、それらの意見をどのようにまとめ、集団の意思として決定するのか、というところにも、いろいろな主義・考え方があります。でも、いつかは、ひとつに決めなくてはなりません。最良の決定をするために、私達はどうするべきなのでしょうか?
そのための方法はただひとつ。
議論することです。
まだまだ私には、わからないことがたくさんあります。
それを克服するためには、自ら率先して学ぶこと、そして、仲間や先生と徹底的に議論することが大切だと、この塾で学ばせていただきました。
最後になりましたが、たくさんのすばらしい授業をしてくださった先生方、そして、たくさんのことを学び合い、切磋琢磨した仲間達、私達を支えて下さった全ての方々に心から「ありがとう」と伝えたいです。
2011 08 10 第六期生 三十番 堀江美音
|